不動産登記についての先例や質疑応答のうち、遺贈による所有権移転登記に関連するものを選んで掲載しています。内容の正確性については一切の保証をしません。また、ご質問も承っておりません。

遺贈の登記

包括遺贈の登記は、登記権利者としての受遺者及び登記義務者としての遺言執行者又は相続人の共同申請による(昭和33.4.28民
甲779局長心得通達)。

全財産の2分の1を甲乙に均等に贈与し、残部を相続人が法定相続する旨の遺言があった場合は、所有権の2分の1の包括遺贈の登記をする(昭和34.4.6民甲658局長回答)。

相続人でない者に全財産を遺贈する旨の遺言書を添付し、遺贈登記を申請することができる(昭和29.5.6民甲968局長回答)。

「遺言者は、後記受遺者(相続人のうちの一人)に後記不動産物件を遺贈する」旨の記載のある公正証書を添付した所有権移転の登記の登記原因は、「相続」ではなく「遺贈」とすべきである(昭和48.12.11民三第8859局長回答)。

相続人のない者から包括遺贈を受けた者のためにする不動産所有権取得登記は、右受遺者と遺言執行者との共同申請によるべきである(東京高決昭和44.9.8)。

相続人の全員に対して各別「後記物件を遺贈する」旨の遺言

・相続人の全員に対して各別に「後記物件を遺贈する」旨の記載がある公正証書による遺言に基づく所有権移転の登記原因は、「遺贈」とするのが相当である(昭和58.10.17民三第5987第三課長回答)。

相続人に対する所有権移転登記であれば「相続」が登記原因となるのが通常ですが、上記のケースでは「遺贈」を登記原因とするわけです。ただし、登録免許税の税率は相続の場合と同じく、不動産の固定資産評価額の1000分の4で済みます(通常の遺贈の場合には1000分の20)。

それでも遺贈による所有権移転登記であることに変わりはありませんから、相続人による単独申請は出来ず、相続人全員を登記義務者とする共同申請をすることになります。また、相続人全員による登記申請が難しい場合には、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらい、遺言執行者を登記義務者として遺贈登記を行うことも可能です。

なお、相続財産の全部を包括名義で遺贈し、その処分を受けるものが相続人の全員である場合には、相続が登記原因となります。

被相続人が相続人に対し相続財産の全部を包括名義で贈与する旨の遺言があるときは、その処分を受ける者が相続人の全員である場合には、その所有権移転の登記は、相続を登記原因としてなすべきである。(昭和38年11月20日民事甲第3119号・民事局長回答)