相続登記に使用する遺産分割協議書へは、署名及び実印により押印し、印鑑証明書を添付します。

相続人が外国人の場合でも、印鑑証明書が取得できるならば、日本人の場合と変わりません。外国人が「登記義務者」として登記を申請する場合について、次の先例があります。

外国人が登記義務者として登記を申請する場合、日本における居住地市区町村長の印鑑証明書を添付し、申請書又は委任状等に証明にかかる印鑑を使用して登記申請があった場合には、その登記申請は受理すべきである。(昭和35年04月02日 民事甲787)

また、印鑑証明書に代えて、申請書又は委任状の署名が本人のものであることの「本邦大使館等の発給した証明書」によることもできます。

外国人が登記義務者として登記を申請する場合には印鑑証明書に代えて、申請書又は委任状の署名が本人のものであることの本邦大使館等の発給した証明書を提出して差し支えない。(昭和59年08月06日 民三3991)

外国に帰化した元日本人の場合(署名証明の利用)

外国人であっても、後になって外国籍を取得した「元日本人」が遺産分割協議をするときには、現在の国籍がある国に所在する日本大使館等で発給された証明書によることもできます。

たとえば、在アメリカ合衆国日本大使館ウェブサイトのEmbassy of Japan 署名(及び拇印)証明のページに次の記載があります。

元日本人の方で、不動産登記・遺産相続・所有財産整理手続きに署名証明が必要な場合には申請を受付けます。

必要書類

・失効した日本国パスポート原本又は戸籍(除籍)謄(抄)本(発行後3ヶ月以内)

・運転免許証や米国旅券等の写真付きの身分証明書

上記書類および遺産分割協議書を総領事館に持参し、「署名証明」および「居住証明書」の交付を受けることで、相続登記をおこないました。なお、海外在住の日本人の場合には「在留証明」の発給が受けられますが、外国籍を取得した元日本国籍者については、特例として日本国総領事館へ「居住証明書」の申請ができるということです。

署名証明については、相続人中に海外在住者がいる場合の遺産分割協議書(署名証明)のページも参考にしてください。

現地の公証人による認証を受ける方法

上記のとおり、後になって外国籍を取得した元日本国籍者(元日本人)については、署名証明の交付を受けることが可能ですから、これを利用して相続登記をすることが可能です(在アメリカ合衆国日本大使館の場合)。

また、遺産分割協議書へサインをする際に、その国の公証人による認証を受けることによっても、登記原因証明情報(相続証明書)としての適格性を有します。たとえば、アメリカの公証人(Notary Public)の認証印がある「遺産分割協議書」および「帰化証明書」を添付することで相続登記をおこないました。

帰化証明書(Certificate of Naturalization)の日本語訳

なお、先日取り扱ったケースでは、遺産分割協議書については日本語で作成したものに認証を受けられたので問題ありませんが、帰化証明書は英語で作成されているので登記の際には訳文の提出も求められました。この日本語訳文は、ご本人に訳していただいたものを使い、翻訳者は司法書士である私の名前にしました。

つまり、翻訳文の末尾へ「上記は別紙帰化証明書(Certificate of Naturalization)の日本語訳に相違ありません。」というような文言に続き、「翻訳者 司法書士 高島 一寛(印)」と記載したのです。

必ずこれで受け付けてもらえるかは不明ですが、帰化証明書の全文を全て翻訳しなくとも、帰化したことが分かる重要な部分を訳してあれば差し支えないと思われます。また、翻訳者に制限はありませんから、今回のように司法書士であっても構わないわけです。

(最終更新日:2015/10/22)

関連ページ(相続と登記手続の相談室)

相続登記のよくある質問