遺産分割協議書へは、相続人全員が署名および実印による押印をして、印鑑証明書を添付するのが原則です。
けれども、印鑑証明書は、住所地の市区町村に印鑑登録をすることにより交付を受けられるものです。日本に住民登録をしていない方については、日本の市区町村役場で印鑑証明書を発行してもらうことができません。
そのため、海外に在住していて日本に住所が無い方が、遺産分割協議書への署名押印などをする際には、通常とは違った方法をとることになります。
1.領事館発行の印鑑証明書を使う方法
所在地の領事館等に印鑑登録をして、印鑑証明書の発行が受けられる場合には、その印鑑証明書を添付することにより、相続登記などの遺産相続手続がおこなえます。
つまり、日本在住の方と同様に、遺産分割協議書へ実印(領事館等への登録印)を押印し、領事館等から交付された印鑑証明書を添付するわけです。
ただし、すべての領事館等で印鑑登録が可能なわけではなく、あまり一般的な方法では無いようです。多くの場合、以下にご説明する署名証明が使われることが多いと思われます。
ご参考までに、在香港日本国総領事館のウェブサイトに、印鑑登録についての記載があります(在香港日本国総領事館、主な届出手続)。
2.署名証明を使う方法
印鑑証明書の代わりに、本人の署名(及び拇印)に相違ないことの、所在地の日本領事館等の発給した証明書(一般に「署名証明書」といいます)を利用することができます。
署名証明の発行を受けるための、具体的な手続は次のとおりです。なお、遺産分割協議書への署名は領事の面前でしなければならないので、事前に署名をせずに持参します。
1.遺産分割協議書を在外公館(外国にある日本国大使館、総領事館)に持参し、領事の面前で署名および拇印を押捺します。
2.遺産分割協議書と署名証明書を綴り合わせて割り印をしてもらいます。
領事館等に行く際は、次のようなものが必要です(在ニューヨーク総領事館の場合。手続をする領事館等へ事前にご確認ください)。
1.申請人名義の有効な日本国旅券
2.当地滞在資格を証明する書類(グリーンカード、VISA等)
3.署名(及び拇印)するよう日本から送られてきた書類(遺産分割協議書、委任状など)
なお、上記の在ニューヨーク総領事館のページでは、「署名等を行う書類をお持ちでない方には、当館で用意した書式により証明書を作成いたします」との記載があります。
これは、申請者の署名(及び拇印)を単独で証明する(署名証明書のみを単独で発行する)ものですが、相続登記に使う署名証明は、上記のように「遺産分割協議書と署名証明書を綴り合わせて割り印」をしたものが原則です。
署名証明書の書式(サンプル)などは、相続人中に海外在住者がいて印鑑証明書が取れない場合をご覧ください。