不動産の名義変更などの遺産相続手続をおこなおうとしたところ、存在すら知らなかった相続人のいることが判明したとのご相談も決して珍しいことではありません。多いのは、次のような前妻との間に子がいたとこが判明したというケースです。

亡くなった父の遺産相続をしたい。父は再婚しているのだが、前妻との間にも子がいることが今になって判明した。父の生前には、自分たちの他にも子どもがいることは聞かされていなかった。

上記のようなケースで父が遺言書を作成していなかった場合、遺産相続の手続をする際には、相続人全員の署名押印がある遺産分割協議書が必要です。また、協議書に署名押印している人が相続人の全員であることを証明するため、父(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本(除籍、原戸籍謄本)を用意します。

出生から死亡に至るまでの除籍謄本などにより、被相続人の子の全員が判明します。離婚した前妻との間の子や、結婚していない相手との子であっても認知していれば戸籍に記載されるからです。

なお、実の子であっても認知していなければ、父親の戸籍に記載されることはありません。よって、認知していない子との間には法律上の親子関係は無く、父の相続人になることもありません。

被相続人(父)の死後に、会ったことも無い兄弟姉妹の存在が発覚するのは珍しいことではありません。本来であれば、前菜との間に子がいるのであれば、自らの生前にその存在を明らかにするとともに、遺言書を作成するなどの対策を講じておきべきです。

しかしながら、亡くなってしまった後に、そのようなことを言っても仕方ありません。そこで、何とか連絡を取って、遺産分割協議への協力を求めることになります。

会ったことも無い相続人と、どうやって連絡を取るか

会ったことが無く住所すら分からない場合であっても、住民票のある住所を調べることは可能です。その相続人の本籍地で「戸籍の附票」を取れば、現住所が判明するのです。

けれども、相続人がご自分でそのような作業をおこなうのは非常に困難です。そこで、相続登記手続をするためなどの必要性があるときには、「戸籍の附票」の取得などによる相続人の調査を司法書士におまかせいただけます。

住所が判明したら、まずは手紙を送ってみるのが通常です。いきなり、司法書士から送るのでは無く、共同相続人ご自身の名前で手紙を送るのが一般的でしょう。

そして、遺産分割協議への協力が得られる目処が立った後に、司法書士から事務手続についての説明をして、必要書類への署名押印などをいただくことになります。

再婚後の妻子に存在すら知らせていなかったということは、被相続人である父自身との交流も途絶えていた場合が多いでしょう。このようなときは、父に対して良い印象を持っておらず、したがって、遺産相続手続にもすんなりとは協力して貰えないことも考えられます。それでも、司法書士と相談しながら、一つ一つの手続を慎重に進めていくしかありません。