相続登記をするには、被相続人の最後の住所を証するための書面として、住民票除票(本籍地の記載のあるもの)または戸籍附票が必要です。

これは登記簿に所有者として記載されている人と、被相続人との同一性を証明するためです。登記簿に記載されている所有者の住所氏名と、住民票除票の住所氏名が一致すれば、被相続人がその不動産の所有者であると認められるわけです。

しかし、住民票除票の保存期間は5年ですから、被相続人の死亡から5年が経過すると発行されなくなります。また、戸籍附票についても除票になってからの保存期間は5年です。

たとえば、戸籍に記載されている人の全員が除籍になった場合には、戸籍の附票が除票となりますから、それから5年が経過すれば戸籍(除籍)の附票も発行されなくなるわけです。

さらに、戸籍がコンピュータ化されたことなどによって改製されている場合にも、それから5年間が経過すると戸籍(改製原戸籍)の附票が発行されなくなることもあります。

相続開始から時間が経過したせいで、相続登記の必要書類である住民票除票、または戸籍附票が取得不能になるのは決して珍しいことではありません。このような場合であっても、最終的に相続登記が不可能になることはないはずですが、手間や費用が余計にかかることもあります。

被相続人の最終住所を証明できない場合の相続登記

ここでは被相続人の最終住所を証明できない場合の相続登記について、一般的であろうと思われる実務の取り扱いについて解説します。法務局によっては必要書類等が異なる場合がありますから、事前に法務局で相談してから手続きをするようにしてください。

また、このように通常と異なる特殊な相続登記手続きを、登記の専門家ではない一般の方がおこなうのは困難だと思われます。司法書士に手続きを依頼することをお勧めします。

まず、必要書類の提出が不可能なときには、被相続人と不動産所有者の同一性を証明するのは不可能であることになります。この場合、他の書類等を補充的に提出することにより、同一性を認定しようとしています。

提出する書類としては次のようなものがあります。具体的に何が必要となるのかは、登記する不動産を管轄する法務局で確認を取ってください。

権利証(登記済証)

被相続人が不動産の所有権を取得した際の権利証(登記済証)、または登記識別情報通知がある場合、その提出が求められることがあります。

権利証等を保有しているということは、所有者である可能性が高いと判断されるからです。実際には、被相続人が所有しているのではなく、遺品の中にあったのを相続人が持っているわけですが、いずれにせよ被相続人と、登記名義人の同一性の認定に役立つ資料だといえます。

不在籍、不在住証明

不在籍証明では、本籍・氏名を記した上で「現在肩書のところに戸籍のないこと」が証明されます。また、不在住証明では「現在肩書のところに住所のないこと」を証明するものです。下記は、不在住証明の例です。

不在住証明書

住所 東京都豊島区池袋一丁目1番1号

氏名 千葉 花子

上記の者は、現在肩書のところに住民票のないことを証明する。

平成26年4月10日

東京都豊島区長 ○○ ○○ (印)

現在、その場所に本籍(住所)がないことを証明しても、過去の住所が証明されるわけではありません。それでも、他に証明する手段がないために、補充的に提出が求められるものです。

その他の書類(固定資産評価証明書、相続人による上申書)

被相続人と登記簿上所有者のつながりを証明するのが困難な場合、被相続人の住所氏名が記載されている固定資産評価証明書が取れれば同一性の認定に役立ちます。

さらに、市区町村等から発行される書類だけでは、どうしても足りないという場合には、相続人名義による上申書の提出が求められることもあるでしょう。上申書の文言は次のようなもので、相続人全員が署名押印(実印)します。

上記被相続人の相続登記申請に際し、相続を証する書面(登記原因証明情報)の一部としての、被相続人の最後の住所と登記簿上の住所のつながりを証する書面は、保存期間を既に過ぎているため、交付を受けることができませんでした。
よって、証明は不十分となりましたが、後記物件の登記簿上の所有者は、上記被相続人に相違ない旨をここに上申いたします。関係書類審査のうえ御受理いただけるようお願い申し上げます。

相続人が上記のような証明をしても、被相続人と、登記名義人の同一性が認定されるわけではありません。それでも、必要書類を可能な限り収集した上で、さらに相続人からの上申書も提出することにより、登記を受理するとの取り扱いがなされているのです。

関連ページ(相続と登記手続の相談室)

相続登記のよくある質問