被相続人の死亡により相続が開始しますが、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する(民法898条)」とされています。つまり、相続財産は各相続人の法定相続分に応じて共有の状態になるわけです。

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができます(民法907条1項)。共同相続人の協議により、個々の相続財産を各相続人の単独所有にするなど、最終的な財産の帰属を決定するのです。

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じます(民法909条)。相続開始時には、相続人の共有に属するとされていたのが、遺産分割の成立により相続開始当初から、各相続人に引き継がれたこととなるのです。

遺産分割協議の方法

遺産分割協議は、共同相続人の全員によりおこなわなければなりません。一部の相続人を除外しての遺産分割協議書は無効ですから、相続人中に行方不明の人がいるからといって、その他の相続人のみで協議をすることはできません。

また、相続人中に未成年者、被後見人がいるときには、その法定代理人(親権者、後見人)が代わりに遺産分割協議に参加します。もしも、未成年者(被後見人)と法定代理人との間に利益相反があるときには、特別代理人の選任が必要となることもあります。

認知症などにより判断能力が失われている相続人がいるときにも、その相続人のために後見人を選任してもらわなければ遺産分割協議をおこなうことはできません(遺産分割協議で認知症の相続人がいるとき)。

共同相続人の全員による遺産分割協議が成立したときには、その協議内容を記した遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印します。押印は実印によるのが原則で、印鑑証明書を添付します。

不動産の名義変更(相続登記)は、登記申請書やその他の必要書類とともに、遺産分割協議書を法務局へ提出しておこないます。遺産分割協議書の記載に間違いがあると、登記ができないこともあるので、遺産分割協議書の作成も専門家(司法書士など)に依頼するのが安心です。

なお、遺産分割は、共同相続人の協議によるのが原則ですが、協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することがでます(民法907条2項)。この場合には、家庭裁判所の遺産分割調停(審判)により、遺産の分割がおこなわれることになります。