遺産分割協議による相続登記をする際には、「遺産分割協議書に署名押印している人が、相続人の全員であること」を証明しなければなりません。

そのために、「被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍(除籍、原戸籍)謄本」などが必要となるわけですが、古い除籍(原戸籍)の場合には、市区町村から受けられないことがあります。除籍簿の保存期間経過により廃棄されている場合のほか、戦災や震災により焼失し再製ができなかったものもあります。

このような場合に、相続登記をするためには何が必要なのかについて解説します。ただし、登記申請をする法務局によって取り扱いが異なる場合もあると思われますので、事前に確認をするようにしてください。また、手続きについては司法書士に依頼されることをお勧めします。

除籍謄本が交付できないことの告知書

除籍簿が消失し、再製ができなかったとなれば、誰が相続人の全員であるかを戸籍等によって証明することは不可能となってしまいます。この場合に相続登記をするためには、除籍消失により謄本が交付できないことについての「告知書」を区役所等から公布してもらいます。

告知書

本籍 神田区○○
筆頭者 東京 太郎

旧神田区

 大正3年以前の除籍簿・原戸籍簿及び大正12年5,6,7,8月分の除籍簿は、大正12年9月1日の震災により焼失した。

旧麹町区

 昭和20年5月26日以前の除籍簿・原戸籍簿は、昭和20年5月26日の戦災により焼失した。

(東京法務局で保管の同副本も、同日の戦災により消失したため再製できない。)

 以上の理由により、その謄抄本及び証明書の交付は、できない。

上記のとおり告知する

平成○年○月○日

千代田区長 ○○ ○○

告知書

除籍消失により謄本の交付ができないことについて

除かれた戸籍の表示
本籍 東京市本郷区○○
戸主の氏名 東京 太郎
消除年月日 不詳

 上記の除籍簿および東京法務局に保管中の副本は、昭和20年3月10日に戦災で焼失しました。

 このために再製することができないので、除籍の謄本は交付できません。

平成○年○月○日

文京区長 ○○ ○○

告知書の例(PDF形式)

他に相続人がいないことの証明書

相続登記をする際には、取得できた除籍謄本などと上記の告知書に加え、相続人全員による「他に相続人がいないことの証明書」を作成し、署名押印(実印)のうえ、印鑑証明書を添付します。

他に相続人がいないことの証明書

最後の本籍 東京都豊島区巣鴨一丁目○番地
最後の住所 東京都豊島区東池袋一丁目○番○号
      被相続人 東京 太郎(平成○年○月○日死亡)

上記の者の相続人は私たちだけであり、他に相続人はいないことを証明します。

平成○年○月○日

   本籍 東京都文京区本駒込三丁目○番地
   住所 同所○番○号
      相続人  (署名・押印)

   本籍 東京都豊島区駒込一丁目○番地
   住所 東京都豊島区西巣鴨三丁目○番○号
      相続人  (署名・押印)

上記のような書式によるほか、「遺産分割協議書ならびに他に相続人がいないことの証明書」として、遺産分割協議書中に「被相続人○○○○には、上記の他に相続人がいない」というような記載をすることでも差し支えないでしょう。

なお、他に相続人がいないことの証明書は相続人全員によらなければなりませんから、持分なきことの証明(特別受益証明書)を出している方についても署名押印の必要があります。

関連ページ(相続と登記手続の相談室)

相続登記のよくある質問