このブログ記事は「戦災、震災等で除籍簿が消失している場合の相続登記で必要な書類」について書いていますが、記事を新規公開した平成26年当時とは取り扱いが変更になっています。

かつては、除籍等が廃棄処分されているため、相続を証する書面として添付することができない場合、「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書に加えて、「他に相続人はいない」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明書添付)の提供が必要であるものとされていました。

滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書及び「他に相続人はいない」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明書添付)の提供を要する取扱とされていた(昭和44年3月3日付け民事甲第373号法務省民事局長回答)。

それが、次の平成28年3月11日付け民二第219号法務局長・地方法務局長宛て民事局長通達により、取り扱いが変更となっています。

除籍等が滅失等している場合の相続登記について(通達)

 相続による所有権の移転の登記(以下「相続登記」という。)の申請において、相続を証する市町村長が職務上作成した情報(不動産登記令(平成16年政令第379号)別表の22の項添付情報欄)である除籍又は改製原戸籍(以下「除籍等」という。)の一部が滅失等していることにより、その謄本を提供することができないときは、戸籍及び残存する除籍等の謄本のほか、滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書及び「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明書添付)の提供を要する取扱いとされています(昭和44年3月3日付け民事甲第373号当職回答参照)。

 しかしながら、上記回答が発出されてから50年近くが経過し、「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書を提供することが困難な事案が増加していることなどに鑑み、本日以降は、戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え、除籍等(明治5年式戸籍(壬申戸籍)を除く。)の滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書が提供されていれば、相続登記をして差し支えないものとしますので、この旨貴管下登記官に周知方お取り計らい願います。

 なお、この通達に抵触する従前の取扱いは、この通達により変更したものと了知願います。

現在では、戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え、除籍等の滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書を提供すれば、「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明書添付)の提供は不要となっているわけです。


(2025年7月31日 追記)これ以降の記述は、取り扱いが変更される前に書いたものですが、ご参考までにそのまま残しておきます。「除籍謄本が交付できないことの告知書」については現在も変わりませんが、「他に相続人がいないことの証明書」の作成が必要になることは通常ないと思われます。

相続登記の必要書類については、不動産登記の専門家である司法書士にご相談ください。千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)への相続登記のご相談については、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご予約くださいますようお願いいたします。

他に相続人がいないことの証明書(相続登記)

遺産分割協議による相続登記をする際には、「遺産分割協議書に署名押印している人が、相続人の全員であること」を証明しなければなりません。

そのために、「被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍(除籍、原戸籍)謄本」などが必要となるわけですが、古い除籍(原戸籍)の場合には、市区町村から受けられないことがあります。除籍簿の保存期間経過により廃棄されている場合のほか、戦災や震災により焼失し再製ができなかったものもあります。

このような場合に、相続登記をするためには何が必要なのかについて解説します。ただし、登記申請をする法務局によって取り扱いが異なる場合もあると思われますので、事前に確認をするようにしてください。また、手続きについては司法書士に依頼されることをお勧めします。

除籍謄本が交付できないことの告知書

除籍簿が消失し、再製ができなかったとなれば、誰が相続人の全員であるかを戸籍等によって証明することは不可能となってしまいます。この場合に相続登記をするためには、除籍消失により謄本が交付できないことについての「告知書」を区役所等から公布してもらいます。

告知書

本籍 神田区○○
筆頭者 東京 太郎

旧神田区

 大正3年以前の除籍簿・原戸籍簿及び大正12年5,6,7,8月分の除籍簿は、大正12年9月1日の震災により焼失した。

旧麹町区

 昭和20年5月26日以前の除籍簿・原戸籍簿は、昭和20年5月26日の戦災により焼失した。

(東京法務局で保管の同副本も、同日の戦災により消失したため再製できない。)

 以上の理由により、その謄抄本及び証明書の交付は、できない。

上記のとおり告知する

平成○年○月○日

千代田区長 ○○ ○○

告知書

除籍消失により謄本の交付ができないことについて

除かれた戸籍の表示
本籍 東京市本郷区○○
戸主の氏名 東京 太郎
消除年月日 不詳

 上記の除籍簿および東京法務局に保管中の副本は、昭和20年3月10日に戦災で焼失しました。

 このために再製することができないので、除籍の謄本は交付できません。

平成○年○月○日

文京区長 ○○ ○○

告知書の例(PDF形式)

他に相続人がいないことの証明書

相続登記をする際には、取得できた除籍謄本などと上記の告知書に加え、相続人全員による「他に相続人がいないことの証明書」を作成し、署名押印(実印)のうえ、印鑑証明書を添付します。

他に相続人がいないことの証明書

最後の本籍 東京都豊島区巣鴨一丁目○番地
最後の住所 東京都豊島区東池袋一丁目○番○号
      被相続人 東京 太郎(平成○年○月○日死亡)

上記の者の相続人は私たちだけであり、他に相続人はいないことを証明します。

平成○年○月○日

   本籍 東京都文京区本駒込三丁目○番地
   住所 同所○番○号
      相続人  (署名・押印)

   本籍 東京都豊島区駒込一丁目○番地
   住所 東京都豊島区西巣鴨三丁目○番○号
      相続人  (署名・押印)

上記のような書式によるほか、「遺産分割協議書ならびに他に相続人がいないことの証明書」として、遺産分割協議書中に「被相続人○○○○には、上記の他に相続人がいない」というような記載をすることでも差し支えないでしょう。

なお、他に相続人がいないことの証明書は相続人全員によらなければなりませんから、持分なきことの証明(特別受益証明書)を出している方についても署名押印の必要があります。

関連ページ(相続と登記手続の相談室)

相続登記のよくある質問