住宅ローンの返済期間中、その不動産の所有者(住宅ローンの債務者)が死亡、または高度障害になった場合に、団信(団体信用生命保険)に入っていれば、残りの債務は保険金によって完済されます。

多くの民間金融機関では、住宅ローンの借入をする際には団信への加入が必須とされています。また、住宅金融支援機構のフラット35では団信へ加入するかは任意ですが、実際には9割以上が加入しているようです。

相続登記と抵当権抹消登記の順序

団信により残りの住宅ローンが全額弁済された場合、借入先の金融機関などから抵当権抹消登記のための必要書類が交付されます。この書類があれば抵当権抹消登記がおこなえるのですが、その前に相続登記をおこなっておく必要があります。

住宅ローンの完済は相続開始後なので、抵当権抹消登記をするに当たっての登記権利者は相続人だからです。そこで、相続による所有権移転登記(相続登記)をしてから抵当権抹消登記をすることになります。

1件目 相続登記(被相続人から相続人に対する所有権移転登記)
2件目 抵当権抹消登記(登記権利者は1件目の登記により所有者となった相続人)

司法書士が、相続登記および抵当権抹消登記をご依頼いただいた場合、2つの登記を同時に(連件で)申請するのが通常です。まずは、相続登記を申請し完了した後に、あらためて抵当権抹消登記をすることも可能ですが、余計な手間や時間がかかるからです。

ただし、連件で申請したときには、申請書類や添付書類に不備があった場合に、すべての登記をいったん取り下げることになってしまいます。そこで、相続人がご自分で登記をしようとするときには、相続登記と抵当権抹消登記を1件ずつ順番に登記するのが通常でしょう。

相続開始前にローンを完済していた場合

被相続人が生前に住宅ローンを完済していたが、抵当権抹消登記をしないでいるうちに亡くなってしまった場合には、被相続人名義のまま抵当権を抹消することも可能です。

この場合、相続人中の1人が登記権利者として、抵当権抹消登記をすることになります。登記をする際は、通常の抵当権抹消登記の必要書類に加え、相続開始の事実を証する被相続人の戸籍(除籍)謄本と、登記申請人となる相続人の戸籍謄本を添付します。

上記のとおり、相続登記をすることになしに、抵当権抹消登記のみをするのも可能なので、遺産分割協議に時間がかかるような場合に、先に抵当権抹消登記だけを済ませておくこともできます。

しかし、相続登記および抵当権抹消登記を同時期にするのであれば、相続登記により登記名義人となった相続人が、抵当権抹消登記の登記権利者となり登記手続きをおこなえます。よって、わざわざ被相続人名義のまま抵当権抹消登記をおこなわずとも、相続登記と抵当権抹消登記を続けて(連件)で申請すれば良いことになります。