離婚と戸籍の記載についてご質問をいただくことがあるため、基本的なことについてここで解説します。

結論からいえば、現在の戸籍謄本を見ても離婚歴が分からないようにすることは可能です。しかし、過去の戸籍(除籍謄本など)にある離婚歴を消すことは不可能です。

よって、転籍などにより現在戸籍から離婚歴が見えないようにすることはできるものの、転籍前の戸籍などの提出も求めることにより離婚歴の有無を確認することが可能となります。

なお、松戸の高島司法書士事務所では、離婚歴と戸籍の関係について、お電話による問合せは受け付けていません。以下の記事をお読みになって、それでも分からないことがある場合には、専門家に相談するようにしてください。

戸籍から離婚歴を消す方法はあるのか(目次)
1.結婚と戸籍への記載について
2.離婚すると夫の戸籍はどうなるか
3.転籍によって離婚歴は消える
4.離婚歴がないことを証明するためには

1.結婚と戸籍への記載について

結婚するときには、夫婦について新たに戸籍が作られます。

婚姻届には、結婚後に夫と妻どちらの氏(姓)を使用するかを選ぶ欄があり、氏を選ぶとされた方を筆頭者として新戸籍が編成されます。

たとえば、夫の氏を名乗るとすれば、夫が筆頭者の戸籍ができるわけです(妻の姓を使用する場合には、妻が筆頭者として戸籍の最初に記載されます)。

2.離婚すると夫の戸籍はどうなるか

夫が戸籍の筆頭者となっている場合で、夫婦が離婚したときには、その戸籍から妻が除籍されます(除籍された妻は、新たに戸籍を作るか、結婚前の戸籍に戻ることになります)。

この場合、夫の身分事項欄に「離婚」が追加され、離婚日、配偶者氏名が記載されます。また、妻の名前の横には「除籍」の文字が大きく書かれます。

なお、電子化される前の縦書きの戸籍では、離婚により除籍された配偶者の名前を「×」で消していました。

このように戸籍にバツ印が付くことから、離婚歴のあることを「バツ一」といわれることがあるわけです。しかし、電子化された戸籍ではバツが付くのではなく、除籍と書かれるわけです。

電子化される前でも後でも、いずれの場合であったとしても、離婚した夫の戸籍には誰といつ離婚したかが記載されています。

それでは、この離婚歴を戸籍から消す方法はあるのでしょうか。

3.転籍によって離婚歴は消える

本籍地を移すことを転籍といいます。本籍地は住んでいる場所とは関係なく、日本の領土内であればどこでも自由に選ぶことができます。

転籍をするには、転籍届を本籍地(または、転籍地、住所地でも可)に出すだけです。それによって、新たな本籍地で戸籍が作られます。

転籍によって新たな戸籍が作られると、前の戸籍にはあった「離婚」についての記載は消えています。新戸籍に引き継がれる「身分事項」に離婚は含まれていないからです。

そこで、転籍後に新たに戸籍謄本を取得すれば、離婚歴(結婚歴)が記載されていない、まっさらな戸籍になっているわけです。

ただし、結婚歴が一度もない人の場合、両親と一緒の戸籍に入っているのが通常です。そのため、自分1人だけの戸籍になっているというだけで離婚歴を疑われる可能性もあるでしょう。

4.離婚歴がないことを証明するためには

現在の戸籍には離婚歴が載っていなくても、転籍する前の除籍謄本を見れば、転籍前の身分事項が記載されています。

したがって、離婚歴があるかを確認にしたいと考える場合には、現在の戸籍謄本だけでなく、転籍前の除籍謄本等も見るようにします。

なお、結婚前に相手方の戸籍を取ることは出来ませんから、離婚歴を隠していることが疑われる場合には、確認に必要な戸籍(除籍)などの提出を求めることになります。

そのようにして戸籍等を確認した場合、離婚歴を隠し通すことは不可能です。つまり、戸籍から離婚歴が消えるといっても、現在の戸籍謄本を見ても離婚歴が分からないというだけのことです。