2019/2/8付の日本経済新聞電子版に土地の相続登記を義務化 所有者不明問題で法改正へとの記事がありました。

詳しくは記事をご覧いただくとして、『所有者不明の土地が増えていることに対応するため民法と不動産登記法を見直す』とのことです。ここでいう「所有者不明の土地」とは『不動産登記簿などの所有者台帳で所有者がすぐ分からなかったり、判明しても連絡がつかなかったりする土地』を指します。

記事では所有者不明の土地について次のように書かれています。

こうした土地は所有者が亡くなった後に相続人が決まらず放置されたり、相続人が登記簿上の名義を書き換えなかったりして発生する例が多い。権利関係を外部からわかりやすくするため、法務省は相続時の登記の義務化を検討する。登記していなければ罰金などを科すことも視野に入れる。

このような問題が生じているのは、現在は相続登記をするのが義務ではないからです。相続登記とは、相続を原因とする不動産(土地など)の所有権移転登記のことですが、そもそも不動産の所有権移転登記をすること自体が義務とはされていません。

不動産に関する物権の変動の対抗要件として、民法177条で次のとおり規定されています。

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

上記の規定により、不動産の所有権を取得しても登記をしなければ、自分が所有者であることを第三者に主張することができないことになります。そこで、不動産を購入(売買)し所有権を取得した場合には、売買を原因とする所有権移転登記を必ずするでしょう。

ところが、相続の場合には、土地の所有者が亡くなっても登記をすることに考えが至らなかったり、または、遺産分割協議がまとまらないために相続登記ができないというような場合も多くあります。

そのため、長年にわたり相続登記がおこなわれないでいるうちに、相続人が多数になるなどして権利関係が複雑になってしまい、しまいには誰が所有者としての権利を持つのか分からなくなってしまうことがあるわけです。

これが土地の相続登記をするのが義務化されれば、新たに所有者不明の土地が発生するのを防ぐことはできるでしょう。けれども、すでに所有者が死亡している土地についての相続登記を義務化するというのは困難なはずです。

登記しようと思えばすぐにでもできるのを放置しているような場合であれば、その登記をするように促すことはできたとしても、すでに相続登記が困難になっているような土地については義務化されたからといって何とかなるものではありません。

上記記事のまとめにも『法務省の対策は新たな不明土地の発生を防ぐ仕組みが中心となる。すでにあるものも含めて不明土地を減らし、抜本的な解決に結びつけられるかは未知数だ』とありますが、まさにその通りでしょう。大きな問題は「新たに所有者不明の土地が発生する」ことよりも、「現時点で存在する所有者不明の土地」です。

なお、現時点では相続登記が義務ではないといっても、今後のことを考えても相続登記は必ずおこなっておくべきだといえます。相続登記の手続きは司法書士にご相談・ご依頼ください。