法務局へ不動産登記の申請をする際、添付書類の原本とともにコピーを提出することにより、登記完了後に添付した書類の原本を返却してもらうことがあります。この手続きを原本還付(げんぽんかんぷ)といっています。
たとえば、相続登記のときに登記原因証明情報(相続関係証明書)として提出する、戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本、除住民票除票、遺産分割協議書、印鑑証明書などは原則としてすべて原本還付が可能です。
相続登記のために使用した書類の原本還付をしておけば、登記完了後に還付された書類等の一式を、預貯金やその他の相続手続きに使用することもできるので、除籍謄本や印鑑証明書などを何通も取っておく必要がありません。
なお、相続登記を司法書士に依頼した場合には、原本還付の手続きについても登記申請の際に司法書士がおこないます。したがって、ご依頼者(相続人ご自身)が原本還付の手続きや方法について知る必要はないのですが、ときおりご質問をいただくことがあるので参考までに解説します。
相続登記の必要書類については、千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)による、相続登記の必要書類のページをご覧ください。
相続登記の原本還付(目次)
1.不動産登記での原本還付の方法
2.相続登記の場合の原本還付
3.相続関係説明図による原本還付の方法
1.不動産登記での原本還付の方法
不動産登記申請の際の添付書面の原本還付を受けるには、原本還付を請求する添付書面のコピーを取り、そのコピーの末尾に「上記は原本に相違ありません」と記載して、その下に署名(または、記名)押印をします。
このとき使用する印鑑は申請書に押すのと同じものです。また、原本還付する書類が複数枚である場合は、ホチキスどめしてから各用紙のつづり目に契印をします。この場合、「上記は原本に相違ありません」の記載および署名(記名)押印は、還付する書類の最後の1枚だけにすれば足ります。
(戸籍謄本、住民票などのコピー)
上記は原本に相違ありません。
司法書士 高島 一寛 (印)
登記申請書へは上記のコピーを添付し、一緒に添付書面の原本を提出します。これにより、登記が完了したときには、添付書面の原本を還付してもらうことができます。
2.相続登記の場合の原本還付
相続登記の申請の場合には、多数の戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を添付することになるのが通常です。
この戸籍謄本などについて、すべてコピーを取って上記のような原本還付の手続きをすることも可能ですが、添付書面の数が多い場合にはとても大変です。そこで、相続登記では、以下にご説明するように相続関係説明図を提出することにより戸籍謄本などのコピーの提出を省略することもできます。
3.相続関係説明図による原本還付の方法
相続関係説明図を提出した場合には、添付書面の原本還付を受ける際に、被相続人についての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本、および相続人の戸籍謄本のコピーの提出を省略できます。
相続登記申請の審査などに必要となる相続関係は、相続関係説明図にすべて記載されています。そのため、登記申請をしたときに登記官により戸籍謄本などの原本を確認しておけば、その後は法務局で戸籍謄本などを保管しておく必要がないからです。
なお、相続関係説明図を提出した場合でも、被相続人の最後の住所を証する書面(住民票除票、または除籍等の附票)、遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書については、それぞれのコピーを提出して通常の原本還付手続きをする必要があります。
また、不動産の所有権を取得する相続人(申請人)の住民票は、登記原因証明情報(相続関係証明書)の一部としてではなく住所証明情報として提出するものですから、こちらも通常の原本還付の手続きをしなければなりません。
相続関係説明図には、被相続人の本籍、最後の住所、登記簿上の住所、相続開始日を書きます。また、相続人の住所、生年月日、および誰が不動産を相続するのか、また、不動産の一部を相続する場合にはその持分も書く必要あります。その上で、末尾に「相続を証する書面は還付した」として確認印が押されるわけです。
・相続関係説明図の例(PDF形式)

