被相続人である父が妻との死別後に再婚している場合、父の遺産についての分割協議をする際には、どのように遺産を分けるべきかについてよく検討する必要があります。
なお、父が離婚後に再婚しているときにも、この記事で説明しているのと同じ相続関係となります。しかしながら、離婚後に再婚しているような場合には、相続手続きを進めていくのは後妻の親族である場合が多いと思われるので、ここでは死別している場合を例として解説します。
ここで解説する例とは違う場合などでも、遺産分割協議や相続手続きのことなら、千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)へご相談ください(当事務所へのご相談は予約制ですので、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご連絡くださいますようお願いいたします)。
父の後妻の相続人になるのは誰なのか
1.父の後妻の相続人
2.先妻との子と後妻との親族関係(相続権はあるのか)
3.後妻の遺産を引き継ぐ方法
4.父の遺産分割協議をどうするべきか
1.父の後妻の相続人

上図の例の場合に相続人となるのは、先妻(昭和60年死亡)との間に生まれた長女と長男、および後妻(平成10年婚姻)の3人です(後妻との間にも子がいれば、その子も相続人となりますが、本例では後妻との間には子がいないものとします)。
よって、遺産分割についての話し合いは、相続人である上記の3人によりすることとなります。
この場合に、長男および長女と後妻との関係が良好なのであれば、父が亡くなるまで連れ添った後妻が、父の全財産を相続することに異論がないということもあるでしょう。
そこで、被相続人の妻(本例では後妻)が全ての財産を相続するとの遺産分割協議を成立させたとします。
2.先妻との子と後妻との親族関係(相続権はあるのか)
この場合に、後妻が亡くなり相続が開始したときには、誰が相続人となるのでしょうか。
まず、父が再婚した場合でも、その子たちと再婚相手(後妻)との間に、自動的に親子関係が生じることはありません。したがって、父の後妻が亡くなったとき、先妻との間の子たちは相続人にはなりません。
また、この場合に父と後妻の間に子がいれば、その子が相続人となりますが、本例では子がいません。
そのため、後妻に兄弟姉妹(または、その代襲者)がいるときには、その兄弟姉妹等のみが相続人となります(後妻には存命の直系尊属がいないものとします)。
つまり、後妻の相続が開始することにより、父が保有していた財産が、後妻を経由して、すべて後妻の親族(兄弟姉妹等)のものになってしまうわけです。
そうなれば、先祖から父が引き継いだ「○○家」の財産が、すべて失われるというようなことにもなりかねません。
このような結果にならないためには、父についての遺産分割協議をおこなう時点で、次の相続のことも考えておく必要があったわけです。
3.後妻の遺産を引き継ぐ方法
いったん後妻に引き継がれてしまった財産を、先妻との子たちが取得するための第一の方法は、先妻との子たちと後妻とが養子縁組をすることです。養子の相続権は実子と同等です。よって、本例のケースでも、後妻と養子縁組をしていれば、養子として後妻の相続人となります。
子たちが幼いうちに父が再婚したような場合では、後妻と養子縁組をすることにより法律上の親子関係を生じさせるのが適切であるケースが多いでしょう。
また、後妻との間に親子関係を生じさせることなく、たんに遺産相続をすることのみが目的であれば、父の遺産を相続した後に、後妻が遺言書を作成することも有効です。
この場合、相続人でない人に財産を引き継がせるのですから、「相続させる」ではなく「遺贈する」との遺言になります。具体的には、前妻との間の子たちに対して「すべての財産を遺贈する」という内容の遺言をするわけです。
こうしておけば、養子縁組をすることなしに遺産を引き継ぐことができます。もしも、後妻に兄弟姉妹がいる場合でも、兄弟姉妹は遺留分がありませんから遺留分の減殺請求をされる心配もありません。
ただし、養子縁組、遺言書作成のいずれについても、後妻である本人が自分の意思によりおこなう必要があるので、子たちだけで何とかなるというものではありません。
それでも、何もしないうちに後妻が死亡してしまったとすれば、先妻との子たちは、父の後妻の財産を相続する権利が一切ないことになるので要注意です。
4.父の遺産分割協議をどうするべきか
ここまでで解説したのは、「父の遺産を後妻が承継している場合」についてですが、父の相続についての遺産分割協議のときに、適切に遺産を分けていればこのような問題は生じるのを避けられたかもしれません。
父の遺産についての相続分は、妻(本例では後妻)が2分の1、長男と長女が4分の1ずつです。そこで、子たちが法定相続分を確保する遺産分割協議をしていれば、少なくとも父の遺産の2分の1は子たちが取得できたわけです。
もしも、これから遺産分割協議をするというような場合には、専門家(弁護士、司法書士)と相談したうえで、遺産分割について決定することをおすすめします。
すでに遺産分割が済んでしまっているのであれば、後妻との養子縁組、また、遺言書の作成や、生前贈与をしてもらうなどの方法を検討していくことになるでしょう。

