(質問)
被相続人所有の不動産について、すでに遺産分割協議に基づいて、相続人(以下、相続人A)に対する所有権移転登記(相続登記)が済んでいます。

ところが、相続人ではない第三者(以下、受遺者B)に「不動産を遺贈する」とした遺言書が存在していました。この場合、相続人Aから受遺者Bに対して、「真正な登記名義の回復」を登記原因とする所有権移転登記をすることは出来ますか?

(回答)
ご質問のケースでは、相続人Aに対する所有権移転登記を抹消した上で、受遺者Bに対する遺贈を登記原因とする所有権移転登記をおこなうべきです。

もし可能だとすれば、相続人Aに対する「相続」を登記原因とする所有権移転登記の後に、受遺者Bに対する「真正な登記名義の回復」を登記原因とする所有権移転登記が入ることになります。これでは、受遺者Bが遺贈により不動産の所有権を取得したことが明らかにならず、物権変動の過程を公示するとの不動産登記法の趣旨に反することにもなります。

ただし、相続人Aへの所有権移転登記が完了した後、第三者を抵当権者とする抵当権設定登記がされているようなときには、その第三者の承諾がなければ所有権抹消の登記をすることが出来ません。この場合、承諾を得ることが出来ないとすれば、相続人Aから受遺者Bに対して「真正な登記名義の回復」により抵当権が付いたまま所有権移転登記をするしか方法がないと考えられます。