先日に申立をした遺言書検認手続の件で、家庭裁判所から当事務所へ電話がありました。
話を聞いてみると、申立書の相続人目録から漏れている相続人がいるので、追加書類が必要だというのです。結局は申立のとおりで正しかったのですが、指摘を受けたときは私も一瞬迷いました。
代襲相続と、いわゆる数次相続の違いを理解する上でも有用な事例ですので、ここで解説をおこないます。実際の事例は、もっとはるかに複雑な相続関係なのですが、簡略化すると次のようになります。
平成18年に被相続人Bが亡くなった後、平成20年にD、平成23年にCが亡くなっています。事情により遺言書検認手続をおこなっていなかったのを、今になって家庭裁判所に申立をするとしたら、誰が相続人として当事者になるでしょうか。
答えは、A、Cの妻、およびDの子である子1、子2の4人です。
まず、Bが亡くなった時点で相続人となったのは、AおよびCの2人です。その後、Cが亡くなったため、Cの相続人が、Cの有していた相続権を引き継ぎます。
Cの相続人は、配偶者および子ですが、子であるDが先に亡くなっているので、その子どもたちが代襲者として相続人となるわけです。
相続開始の順番を確認
裁判所から指摘があったのは、Dの妻も相続人になるはずだというものです。被相続人Bよりも、Dの方が後に亡くなっているのだから、Dの配偶者も相続人になるはずであると。
しかし、平成20年にDが亡くなった時点ではCが存命だったのですから、Bの相続についてDが権利を持つことはありません。平成23年にCが亡くなったとき、Cの相続人がその相続権を引き継ぐわけです。Cの相続人は配偶者、および子Dの代襲者(子1、子2)です。
このように複数の相続が関連しているときは、それぞれの相続について誰が相続人となるのかを確認していく必要があります。一つ一つの相続関係に着目して整理すれば難しいことは無いのですが、非常に複雑な相続関係の場合には専門家であっても理解するのに時間がかかることもあります。
代襲相続と数次相続
被相続人の後に、相続人が亡くなったときには、その相続人が相続権を引き継ぎます。これが、いわゆる数次相続です。本例でいえば、Cの相続人がCの相続権を引き継いでいるのは、この数次相続の状態にあたります。
しかし、Dについては、BよりもDが後に亡くなっているからといって、数次相続の状態になることはありません。Cの推定相続人であったDが、Cよりも先に亡くなっているため、Dの子どもたちに代襲相続するわけです。