このブログ記事では、被相続人の除住民票(戸籍附票)が市区町村等の保存期間経過により取得できない場合、相続登記をするのにどのような書類が必要であるかについて書いていますが、2015年(平成27年)に新規公開した記事ですので、現在とは取り扱い等が異なっている箇所があります。

まず、平成26年(西暦2014年)6月20日以降に消除または改製された住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間は150年に延長されています。よって、被相続人の住民票除票、除籍の附票等が取得できないケースは以前よりも減ってきています。

それでも、平成26年6月19日までに除票となっているものについては交付を受けられないことがあるため、この記事にあるような対応が必要になる場合もあります。

住民票の除票及び戸籍の附票の除票の保存期間が延長されています

住民基本台帳法施行令の一部改正(令和元年6月20日施行)により、平成26年6月20日以降に消除または改製された住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間が5年から150年に延長されました。ただし、同施行令の施行日が令和元年6月20日であるため、5年前の平成26年6月19日以前に消除または改製された住民票の除票および戸籍の附票の除票については、すでに保存期間が経過しているため、適用の対象外となります。

つまり、現在では平成26年(西暦2014年)6月20日以降に消除または改製された住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間は150年になっているので、被相続人が死亡したのが平成26年(西暦2014年)6月20日であれば、その後150年間は住民票除票が取得できるわけです。また、戸籍の附票の場合には、被相続人の死亡後でも同籍の存命者がいる限り消除されないので、被相続人の死亡が平成26年(西暦2014年)6月20日より前であっても取得できる可能性があります。

また、保存期間の経過などにより、住民票除票(または、戸籍、除籍の附票)を取得できない場合、所有権に関する被相続人名義の登記済証も、被相続人の同一性を証する情報となります。

相続による所有権の移転の登記(相続登記)の申請において、所有権の登記名義人である被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なる場合には、相続を証する市区町村長が職務上作成した情報の一部として、被相続人の同一性を証する情報の提出が必要であるところ、当該情報として、住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているもの)、戸籍の附票の写し(登記記録上の住所が記載されているもの)または所有権に関する被相続人名義の登記済証の提供があれば、不在籍証明書及び不在住証明書など他の添付情報の提供を求めることなく被相続人の同一性を確認することができ、当該申請に係る登記をすることができる(平成29年3月23日 民二175)。

上記先例では登記済証とありますが、所有権に関する被相続人名義の登記識別情報通知についても、登記済証と同じく被相続人の同一性を証する情報となります(なお、相続登記の申請時に登記済証、登記識別情報通知を提供する場合は、登記済証、登記識別情報通知の原本とともにコピーを提出して原本還付の処理をおこないます)。

これにより、現在では所有権に関する登記済証(登記識別情報通知)があれば、不在住証明書、相続人による上申書等は不要であるわけです。

さらに、本籍および登記記録上の住所が記載されている住民票、または戸籍の附票が取得できない場合であっても、従前の本籍、従前の住所でも被相続人の同一性は認められます。

被相続人の同一性を証する情報は、登記記録上の住所との関連性を明らかにすることができれば足り、被相続人の登記記録上の住所と符合する本籍の表示は、最後の本籍のみでなく、従前の本籍との符合によっても同一性は認められます。また、被相続人の登記記録上の住所と符合する住民票または戸籍の附票の住所の表示は、最後の住所のみではなく、従前の住所であっても被相続人の同一性は認められます(登研831号133頁)。

ここまで書いてきた全てによっても、被相続人の同一性を証する情報を提供することができない場合に、以下に説明するような書類の取得を検討することになるわけです。

ただし、不動産登記の専門家である司法書士以外の方が、ご自身で必要書類を判断し用意することは困難だと思われます。千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)へのご相談の際には、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご連絡くださいますようお願いいたします。


これ以降は、2015年(平成27年)4月10日に記事を公開したときのままの記述となっていますのでご注意ください。

被相続人の除住民票(戸籍附票)が取得不能な場合の相続登記

相続登記をするには、被相続人の最後の住所を証するための書面として、住民票除票(本籍地の記載のあるもの)または戸籍附票が必要です。

これは登記簿に所有者として記載されている人と、被相続人との同一性を証明するためです。登記簿に記載されている所有者の住所氏名と、住民票除票の住所氏名が一致すれば、被相続人がその不動産の所有者であると認められるわけです。

しかし、住民票除票の保存期間は5年ですから、被相続人の死亡から5年が経過すると発行されなくなります。また、戸籍附票についても除票になってからの保存期間は5年です。

たとえば、戸籍に記載されている人の全員が除籍になった場合には、戸籍の附票が除票となりますから、それから5年が経過すれば戸籍(除籍)の附票も発行されなくなるわけです。

さらに、戸籍がコンピュータ化されたことなどによって改製されている場合にも、それから5年間が経過すると戸籍(改製原戸籍)の附票が発行されなくなることもあります。

相続開始から時間が経過したせいで、相続登記の必要書類である住民票除票、または戸籍附票が取得不能になるのは決して珍しいことではありません。このような場合であっても、最終的に相続登記が不可能になることはないはずですが、手間や費用が余計にかかることもあります。

被相続人の最終住所を証明できない場合の相続登記

ここでは被相続人の最終住所を証明できない場合の相続登記について、一般的であろうと思われる実務の取り扱いについて解説します。法務局によっては必要書類等が異なる場合がありますから、事前に法務局で相談してから手続きをするようにしてください。

また、このように通常と異なる特殊な相続登記手続きを、登記の専門家ではない一般の方がおこなうのは困難だと思われます。司法書士に手続きを依頼することをお勧めします。

まず、必要書類の提出が不可能なときには、被相続人と不動産所有者の同一性を証明するのは不可能であることになります。この場合、他の書類等を補充的に提出することにより、同一性を認定しようとしています。

提出する書類としては次のようなものがあります。具体的に何が必要となるのかは、登記する不動産を管轄する法務局で確認を取ってください。

権利証(登記済証)

被相続人が不動産の所有権を取得した際の権利証(登記済証)、または登記識別情報通知がある場合、その提出が求められることがあります。

権利証等を保有しているということは、所有者である可能性が高いと判断されるからです。実際には、被相続人が所有しているのではなく、遺品の中にあったのを相続人が持っているわけですが、いずれにせよ被相続人と、登記名義人の同一性の認定に役立つ資料だといえます。

不在籍、不在住証明

不在籍証明では、本籍・氏名を記した上で「現在肩書のところに戸籍のないこと」が証明されます。また、不在住証明では「現在肩書のところに住所のないこと」を証明するものです。下記は、不在住証明の例です。

不在住証明書

住所 東京都豊島区池袋一丁目1番1号

氏名 千葉 花子

上記の者は、現在肩書のところに住民票のないことを証明する。

平成26年4月10日

東京都豊島区長 ○○ ○○ (印)

現在、その場所に本籍(住所)がないことを証明しても、過去の住所が証明されるわけではありません。それでも、他に証明する手段がないために、補充的に提出が求められるものです。

その他の書類(固定資産評価証明書、相続人による上申書)

被相続人と登記簿上所有者のつながりを証明するのが困難な場合、被相続人の住所氏名が記載されている固定資産評価証明書が取れれば同一性の認定に役立ちます。

さらに、市区町村等から発行される書類だけでは、どうしても足りないという場合には、相続人名義による上申書の提出が求められることもあるでしょう。上申書の文言は次のようなもので、相続人全員が署名押印(実印)します。

上記被相続人の相続登記申請に際し、相続を証する書面(登記原因証明情報)の一部としての、被相続人の最後の住所と登記簿上の住所のつながりを証する書面は、保存期間を既に過ぎているため、交付を受けることができませんでした。
よって、証明は不十分となりましたが、後記物件の登記簿上の所有者は、上記被相続人に相違ない旨をここに上申いたします。関係書類審査のうえ御受理いただけるようお願い申し上げます。

相続人が上記のような証明をしても、被相続人と、登記名義人の同一性が認定されるわけではありません。それでも、必要書類を可能な限り収集した上で、さらに相続人からの上申書も提出することにより、登記を受理するとの取り扱いがなされているのです。

関連ページ(相続と登記手続の相談室)

相続登記のよくある質問