最初にご注意いただきたいのは、法律上の効果が生じる「相続放棄」をするためには、家庭裁判所での手続きが必要であるということです。

たとえば、他の相続人に「自分は相続放棄をする」との意思を伝えて、それを書面にしたとしても相続放棄をしたことにはなりません。以下は、家庭裁判所へ相続放棄の申述をし受理されたということを前提にして書いています。

家庭裁判所への相続放棄の申立てについても、千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)へご相談ください。また、相続登記の必要書類については、当事務所による相続登記の必要書類のページをご覧ください。

相続人の中に相続放棄をした人がいる場合
1.相続放棄者がいる場合の、相続登記の必要書類
2.相続放棄は家庭裁判所で手続きをします

1.相続放棄者がいる場合の、相続登記の必要書類

相続放棄をした人は、その相続については最初から相続人でなかったものとみなされます。よって、相続登記の申請をする際にも、相続放棄者は相続人から除外されることとなり、相続放棄をしたことを証する書面が添付書類となります。

この相続放棄をしたことを証する書面となるのは、家庭裁判所が発行する「相続放棄申述受理証明書」です。相続放棄を受理した際に家庭裁判所から送られてくる「相続放棄申述受理通知書」では、相続登記の添付書類とはならないとされていました。

現在では次のとおり取り扱いが変更になっていますが、実際に手続きをする際は管轄法務局へ事前に確認することをおすすめします。

相続の放棄があったことを証する情報として、「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会に対する家庭裁判所からの回答書」又は「「家庭裁判所からの相続放棄申述受理通知書」が添付されているときは、その内容が相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載されているものと認められるものであれば、これらを登記原因を証する情報の一部として提供することができる(登研808号)。

なお、高島司法書士事務所(千葉県松戸市)による、「相続放棄申述受理通知書は、相続登記の添付書類となるのか」でも、相続登記の申請に使用できる相続放棄申述受理通知書の判断基準などについて解説しています。

相続人が2名の場合で1人が相続放棄をしているときには、最初から相続人は1人であったものとみなされることになります。したがって、相続放棄申述受理証明書を添付すれば単独で相続登記申請ができるのであり、それ以外に遺産分割協議書などの作成や添付は不要です。

また、相続人中の一部の人のみが相続放棄をしている場合、相続放棄者を除いた相続人により遺産分割協議をおこないます。そして、その遺産分割協議書および相続放棄者についての相続放棄申述受理証明書を添付することにより、相続登記の申請をします。

2.相続放棄は家庭裁判所で手続きをします

法律上の効力を生じる「相続放棄」とは、家庭裁判所で手続きをするものです。そして、相続放棄をしたことを証する書面となるのが、家庭裁判所が発行する「相続放棄申述受理証明書」であるのは上記のとおりです。

相続人による話し合いにより、自分は遺産を相続しないこととなった場合、そのことをもって「自分は相続放棄をした」と認識されている方も多いです。

しかし、これは法律上の意味での相続放棄とは認められません。相続人間の話し合いにより、誰が遺産を承継するかを決めることを遺産分割協議といいます。この協議の結果を記した書面が遺産分割協議書であり、この遺産分割協議書へは相続人全員が署名し実印で押印します。

相続の手続きをおこなうとき、自分は書類に署名押印した記憶があるので、相続放棄をしているはずだという場合でも、よくお話を伺ってみると遺産分割協議書や、または、相続分がないことの証明書などに署名押印しているようなケースもあります。

相続人全員の合意により誰がどの遺産を承継するのかを決定すれば、それは遺産分割協議として有効であり、その結果に基づき不動産の相続登記や、その他の遺産相続手続きをすることが可能です。

しかし、被相続人の債務(借金)を誰が引き継ぐか、相続人の全員によって決めたとしても、その決定が、相続人以外の第三者(債権者など)に効力を及ぼすことはありません。

そのため、被相続人に債務(借金)があった場合、相続人による話し合いがあるかどうかに関係なく、その債務は各相続人へその法定相続分に応じて引き継がれることになります。

自分は遺産を相続しなかったから、借金を引き継ぐ義務はないはずだとと主張しても駄目です。被相続人の借金を引き継がないようにするためには、家庭裁判所で相続放棄の手続きをしなければならないのです。

家庭裁判所への相続放棄の申立てについても、千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)へご相談ください。