相続登記の基本的なパターンとして、遺産分割による相続登記、法定相続による相続登記、遺言による相続登記の3通りに分けられます。

このうち、遺言による場合を除いては、亡くなられた方(被相続人)の法定相続人の全員を、戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本により明らかにする必要があります。

法定相続による相続登記では、相続人全員が法定相続分どおり共有名義で不動産を取得します。また、遺産分割による相続登記をするには、相続人全員により遺産分割協議をおこなわなければなりません。

したがって、誰が法定相続人の全員であるかが分かる書類の提出を求められるわけです。

必要な戸籍謄本等の範囲は、被相続人の子供、直系尊属(父母、祖父母)、兄弟姉妹など、誰が相続人になるかによって変わってきます。

たとえば、被相続人の兄弟姉妹の代襲相続人(おい、めい)が相続人になるときなどでは、膨大な数の戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)が必要になる場合もあります。そのようなときは、専門家であっても全てを収集するのに大変な手間と時間を要することもあります。

ここでは、相続登記に必要な戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本の範囲についての、基本的な事項を解説します。

できるだけわかりやすく解説しようと試みましたが、個々のケースに応じて必要な戸籍謄本等の範囲は異なるので、相続人の範囲を確定させるには、このページの記載程度は理解しておく必要があります。

司法書士に相続登記や、その他の遺産相続手続きをご依頼いただく際は、戸籍謄本等の取得もすべてお任せいただけます。よって、ご依頼者である相続人が理解する必要は無いのですが、ご参考までにご覧ください。

1.被相続人の子供が相続人となる場合

被相続人の子供が相続人となる場合、被相続人が生まれたときから死亡に至るまでの戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本のすべてを取得します。

被相続人が再婚していて前妻(前夫)との間に子供がいる場合、その子供も相続人となるのは当然です。また、結婚していない相手方との間に子供が生まれた場合でも、認知していれば相続人となります。

被相続人が生まれたときから死亡に至るまでの、すべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本を取得することで、上記のような事情がある場合でも、子供の全員が明らかになるのです。

代襲相続が発生している場合

被相続人の子供が、被相続人よりも先に死亡している場合、その子供に子供(被相続人の孫)がいれば相続人となります(これを、「代襲相続」といいます)。

代襲相続が生じているときは、代襲相続人の全員を明らかにする必要があります。そのため、被代襲者(死亡している子供)の出生から死亡に至るまでのすべての戸籍謄本等を取得することになります。

2.被相続人の直系尊属(父母、祖父母)が相続人となる場合

被相続人の直系尊属(父母、祖父母)が相続人となるのは、被相続人に子供(およびその代襲者)がいないか、その全員が既に死亡している場合です。

よって、被相続人の子供が相続人となる場合と同様に、まずは、被相続人が生まれたときから死亡に至るまでの戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本のすべてを取得します。

そして、子供がいる場合には、代襲者がいない(または、代襲者の全員が死亡している)ことを明らかにするため、その子供が生まれたときから死亡に至るまでの戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本のすべてを取得します。

被相続人の直系尊属に亡くなっている方がいる場合

被相続人の直系尊属に亡くなっている方がいる場合には、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)も必要です。たとえば、被相続人の祖母が相続人となる場合、祖母より下の代である父母がすでに死亡している場合ですから、その旨の記載がある戸籍謄本等が必要であるわけです。

3.被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合

被相続人の兄弟姉妹が相続人になるのは、次の2つの条件に該当する場合のみです。

  • 被相続人に子供(およびその代襲者)がいないか、その全員が既に死亡している。
  • 被相続人の直系尊属の全員が既に死亡している。

よって、被相続人の子供が相続人となる場合と同様に、まずは、被相続人が生まれたときから死亡に至るまでの戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本のすべてを取得します。

そして、子供がいる場合には、代襲者がいない(または、代襲者の全員が死亡している)ことを明らかにするため、その子供が生まれたときから死亡に至るまでの戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本のすべてを取得します。

上記により、被相続人には、相続人となる子供(およびその代襲者)がいないことが確定したら、次に、被相続人には存命の直系尊属がいないことを明らかにします。このために、父母、祖父母等の死亡の記載のある戸籍謄本等を取得します。

代襲相続が発生している場合

被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合で、その兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合、その兄弟姉妹に子供がいれば代襲相続します。

そこで、代襲相続が生じているときは、代襲相続人の全員を明らかにする必要があります。そのため、被代襲者(死亡している兄弟姉妹)の出生から死亡に至るまでのすべての戸籍謄本等を取得することになります。