法務局へ不動産登記申請をする際、添付書類の原本とともにコピーを提出することで、登記完了後に原本を返却してもらうことがあります。この手続きを原本還付(げんぽんかんぷ)といっています。

相続登記のときに登記原因証明情報(相続関係証明書)として提出する、遺産分割協議書、戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本、(除)住民票、印鑑証明書などは原則としてすべて原本還付が可能です。原本還付をしておけば、返却された書類を、銀行預金やその他の遺産相続手続きに使用することもできますから、除籍謄本や印鑑証明書などを何通も取る必要がなくなります。

なお、相続登記を司法書士に依頼した場合には、司法書士が原本還付の手続きをおこないます。したがって、ご依頼者が原本還付の方法を知る必要は無いのですが、ときおりご質問をいただくことがあるのでご参考までに解説します。

不動産登記での原本還付の方法

不動産登記申請書への添付書類の原本還付を受けるには、登記申請をおこなう際、登記申請書には添付書類のコピーを付け、一緒に原本を提出します。そして、コピーした文書の末尾に「上記は原本に相違ありません」と書き、その下に署名(または、記名)押印をします。

(戸籍謄本、住民票などのコピー)

上記は原本に相違ありません。  

司法書士 高島 一寛 (印)

このとき使用する印鑑は申請書に押すのと同じものです。また、複数の書類を原本還付する場合には、それぞれの書類の間に契印(割り印)をすれば、署名(記名)押印は最後の1枚だけにすれば足ります。

相続登記の場合の原本還付の方法

相続登記の場合には、多数の戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を添付することになるのが通常です。

この戸籍謄本等について、すべてコピーを取って上記のような原本還付手続きをとることも可能ですが、数が多い場合にはとても大変です。そこで、相続登記では、以下にご説明するように相続関係説明図を提出することで戸籍謄本等のコピー提出を省略することもできます。

相続関係説明図を提出する場合の原本還付

相続関係説明図を提出した場合には、原本還付を受ける際に、被相続人についての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)、および相続人の戸籍謄本のコピー提出を省略できます。

相続登記に必要な相続関係は、相続関係説明図に記載されています。そのため、登記申請時に登記官によって戸籍謄本等を確認しておけば、その後は法務局で確認済みの戸籍謄本等を保管しておく必要がないからです。

なお、相続関係説明図を作成した場合でも、被相続人の最後の住所を証するための除住民票(または、戸籍附票)、遺産分割協議書(および、遺産分割協議書に添付する相続人の印鑑証明書)については、それぞれのコピーを提出して通常の原本還付手続きをする必要があります。

また、不動産の名義人となる相続人(申請人)の住民票は、登記原因証明情報(相続関係証明書)の一部としてではなく住所証明書として提出するものですから、こちらも通常の原本還付手続きをしなければならないのは当然です。

相続関係説明図には、被相続人の本籍、最後の住所、登記簿上の住所、相続開始日を書きます。また、相続人の住所、生年月日、および誰が不動産を相続するのか、また、不動産の一部を相続する場合にはその持分も書く必要あります。その上で、末尾に「相続を証する書面は還付した」として確認印が押されるわけです。

相続関係説明図の例(PDF形式)

最終更新日:2015年6月18日

関連ページ(相続と登記手続の相談室)

相続登記のよくある質問