不動産登記の申請人が未成年者であるときは、親権者(または未成年後見人)が法定代理人として、本人を代理して登記の申請をおこないます。

この場合、登記申請をする際に、代理人の権限を証明する情報(代理権限証明情報)を提出する必要があります。そこで、親権者が法定代理人となる場合であれば、親権を証明することができる戸籍謄本を提出することになります。

なお、代理権限証明情報としての戸籍謄本は作成後3ヶ月以内のものでなければなりません。登記原因証明情報(相続証明書)の一部としての戸籍謄本については有効期限の定めがありませんが、代理権限証明情報として提出する場合には作成後3ヶ月以内でなければならないわけです。

申請人が未成年者であるときの代理権限証明情報
1.法定相続では分割協議のための特別代理人選任は不要
2.相続した不動産を売却する場合
3.代理権限証明情報としての戸籍謄本の期限

1.法定相続では分割協議のための特別代理人選任は不要

未成年者と、その親(親権者)とが共同相続人であるときに、法定相続による相続登記をすることが選択される場合があります。

たとえば、母と子2人が共同相続人である場合に、母2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつの法定相続分どおりの共有による相続登記をするわけです。この場合には、親権者である母が子を代理して登記手続きをおこなうことができます。

遺産分割協議をして法定相続分と異なる割合で登記をするのであれば、未成年者のために特別代理人を選任する必要がありますが、上記のように法定相続による相続登記であれば、利益相反行為に当たらないため特別代理人選任は不要です。そこで、親権者が子を代理して登記手続きをすれば良いわけです。

なお、上記のとおりの相続関係で相続登記をする場合に、特別代理人の選任が不要なのは、遺産分割協議をすることなしに法定相続による相続登記をおこなうときです。遺産分割協議をする場合には、結果として法定相続分どおりとなるときであっても、特別代理人の選任が必要となります。

・未成年者とその親権者とが相続人である場合において、遺産分割協議をするには、分割の結果が法定相続分となる場合であっても、未成年者のために特別代理人の選任を要する(登記研究476号)。

・親権者である母と未成年の子が共に相続人である場合において、遺産分割協議の結果、母は相続財産の分配を受けないものとするときでも、特別代理人の選任を要する(登記研究459号)。

2.相続した不動産を売却する場合

相続登記をすることによって、親権者と未成年者との共同名義になった不動産を売却する際、親権者は未成年者を代理して手続きをおこなうことができます。このとき、家庭裁判所の許可等は必要ありません。

よって、未成年者とその親権者が相続人である場合であって、すぐに相続した不動産を売却するのであれば、いったん法定相続による相続登記をおこなうのが便利なこともあるでしょう。

ただし、法定相続による相続登記の後に不動産を売却した場合、売却代金は共有者それぞれがその持分に応じて取得します。つまり、売却代金のすべてを親である自分のものにするということはできず、子の持分に相当する売却代金は子の財産であることになります。

もしも、売却代金の全てを親が取得したとすれば、子から親へ売却により得た代金を贈与したこととなり、その金額によっては贈与税がかかります。

また、その不動産にそのまま住み続ける場合であっても、未成年者との共有名義にするので差し支えないと考えるならば法定相続による登記をおこなうことも可能です。このときも、特別代理人選任が不要であるのは同様です。

3.代理権限証明情報としての戸籍謄本の期限

法定相続による相続登記をする際には、登記原因証明情報として、相続人の全員を明らかにするための「被相続人の出生から死亡に至るまでの連続したすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)」などが必要となります。

また、親権者が未成年者を代理して登記するときには、上記のとおり代理権限証明情報として、親権を証明するための戸籍謄本も必要です。

登記原因証明情報としての戸籍謄本と、代理権限証明情報としての戸籍謄本が同一のものであれば、登記申請の際に提出するのは1通のみで差し支えありません(代理権限証明情報とするためには作成後3ヶ月以内のものでなければなりません)。

ただし、相続関係説明図を提出していても、その記載をもって親権を証明するものとすることはできません。つまり、代理権限証明情報としての戸籍謄本を提出しなければなりませんから、コピーを提出して原本還付を受けるなどの方法をとる必要があります。