相続人3人に対する、法定相続での所有権移転登記です。相続人中の1人は死亡しており、他の2名のみから委任を受けて保存行為として登記申請するものです。

この登記に続けて(連件で)、他の登記をすることも無く、上記の所有権移転登記のみを申請しました。当然に登記可能だとは思いつつも、実際に申請するケースは滅多にないので備忘録的に書いておきます。

このサイトを運営している松戸の高島司法書士事務所では様々な相続登記を取り扱っていますので、ご相談・ご依頼を希望なさる場合は、事前にご予約のうえご相談にお越しください(ご相談・ご予約はこちらからどうぞ)。

1.登記申請書の記載など

登記申請書の記載などについてポイントのみ記します(この情報だけでは分からないという方はご自分で登記するのは困難だと思われるので、司法書士にご相談ください)。

申請人となる(司法書士へ委任した)相続人2人の記載は通常と何も変わりません。この2人については、「登記識別情報の通知を希望する」としています。

死亡している相続人の氏名の前には「亡」と冠記します。また、この相続人については「登記識別情報の通知を希望しない」としました。

死亡している相続人の相続人から委任を受ければ登記識別情報の通知を受けられるのでは?などと一瞬考えましたが、今回のケースでは死亡している相続人の持分について登記識別情報の通知を受ける必要が無いので、この点については確認していません。

2.死者名義への相続登記をするケース

相続財産管理人が選任されているケースで、相続人不存在を原因とする所有権登記名義人氏名変更登記の前に、死者に対する相続登記をすることはこれまでにもありました。

この場合、相続財産管理人からの委任により所有権移転登記をするのですから、登記識別情報の通知を受けられることに何の疑問もありません。

しかし、今回の登記は、他の相続人が保存行為として申請するものであり、かつ、他の登記の前提としてするのでは無いという点がレアケースだったわけです。

死亡者のために相続による所有権移転登記ができることについては、次の質疑応答があります。

数次相続の開始の場合における中間の相続人のための相続登記の可否(登記研究209号)

問 登記簿上の所有者が甲であるが、甲が死亡して乙が相続し、さらに乙が死亡して丙丁戊が相続し、したがって、現在の相続人は丙、丁、戊でありますが、死亡者乙の相続による所有権移転の登記は、すべきでないとの説もありますが、乙がその不動産を生前第三者に売却している場合もありますので、死亡者乙のために相続による所有権移転の登記もできると思います。いかがでしょうか。

答 中間の相続人乙のために相続による所有権移転の登記をして差し支えないものと考えます(乙の死亡又は生存にかかわらず、また乙が生前売却していると否とにかかわりません。)。

「乙が生前売却していると否とにかかわりません」とあるのですから、今回のような所有権移転登記ができるのは当然の話です。それでも実際にやるとなると、本当にこれでいいのかと不安になったりもするわけです。

なお、このような登記をしても、死者と共有になっている不動産を処分するのは通常困難でしょう。

自分の持分だけを売却し、持分についての所有権移転登記をすることは可能です。しかし、それは死者の持分を残したまま、それ以外の持分を買い取ってくれる相手を見つける必要があるわけですから。

通常であれば、死亡している相続人に相続人がいれば、その相続人に対する相続登記をすることになるでしょう。この場合、いったん死者名義に登記すること無しに、最終の相続人へ登記がおこなえるケースが多いと思われます。

そして、死亡している相続人に相続人がいないならば、相続財産管理人を選任した上で相続財産法人への所有権登記名義人氏名変更をします。