このページでは、数次相続が生じている場合についての、遺産分割協議書の記載の方法について解説しています。さらに詳しい情報は、高島司法書士事務所(千葉県松戸市)による、数次相続による相続登記(遺産分割協議書の作成)もご覧ください。

また、実際に遺産分割協議書の作成や、数次相続による相続登記の手続きを進めていく際には、最初から不動産登記の専門家である司法書士に相談することをおすすめします(相続登記のご案内はこちら)。

千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)では、数次相続や代襲相続が関連する難しい相続登記の取り扱い経験も豊富です。ご相談は予約制ですので、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご連絡くださいますようお願いいたします。

数次相続の場合の肩書き(遺産分割協議書の記載例)
1.数次相続の場合の肩書き(父に続き母が死亡している場合)
2.子に相続が開始したとき
3.相続人の肩書の記載は不要(先例)

1.数次相続の場合の肩書き(父に続き母が死亡している場合)

数次相続の場合の遺産分割協議書の記載について、夫A、妻Bおよび2人の間の子であるC、Dの4人家族を例にしてご説明します。

数次相続のイメージ

被相続人である夫Aが亡くなったが、相続人である妻B、子C、子Dによる遺産分割協議をおこなわないでいるうちに、Bが亡くなりました(第2次相続の発生)。このような数次相続の場合の遺産分割協議書では、被相続人と相続人との関係が明確になるようにします。

下の例では、第1次相続の被相続人Aの相続人はB、C、Dの3人ですから、まずはそれぞれに「相続人」の肩書きが付きます。

続いて、第2次相続の被相続人Bの相続人はC、Dの2人です。そこで、Bの相続人であることが明らかになるよう、「B相続人」との肩書きを付けます。

上記2つの肩書きを付けると、Bは「相続人兼被相続人」、そして、C、Dの2人は「相続人兼B相続人」となるわけです。

肩書の書き方は、絶対にこうしなくてはならないとの決まりはありませんが、誰が誰の相続人として協議に参加しているのかが明確になるようにしなくてはなりません。

それ以外には、通常の遺産分割協議書と変わるところはありません。基本的な書式例については、遺産分割協議書の書き方・サンプルをご覧ください。

なお、実際の遺産分割協議書では、A、B、C、Dのように書くのではありません。下記記載例のA、B、C、Dの箇所に、それぞれの氏名(フルネーム)を戸籍のとおり正確に記載します。

            遺産分割協議書(記載例)

  最後の本籍・住所
         千葉県松戸市松戸1000番地
              被相続人 A(令和5年○月○日亡)

  最後の本籍  千葉県松戸市松戸1000番地
  最後の住所  千葉県松戸市上本郷2000番地
          相続人兼被相続人 B(令和6年○月○日亡)

     本籍  千葉県松戸市松戸1000番地
     住所  千葉県流山市松ヶ丘一丁目100番地
          相続人兼B相続人 C(昭和○年○月○日生)

     本籍  千葉県松戸市松戸1000番地
     住所  千葉県松戸市根本100番地
          相続人兼B相続人 D(昭和○年○月○日生)

  (以下省略)

上記の記載例では、被相続人だけでなく、相続人についても本籍と住所の記載を入れていますが、相続人については住所、氏名、生年月日の記載があれば足りるのが通常です。

            遺産分割協議書(記載例)

  最後の本籍  千葉県松戸市松戸1000番地
  最後の住所  千葉県流山市松ヶ丘一丁目100番地
              被相続人 A (令和5年○月○日亡)

  最後の本籍  千葉県松戸市松戸1000番地
          相続人兼被相続人 B (令和6年○月○日亡)

     住所  千葉県流山市松ヶ丘一丁目100番地
          相続人兼B相続人 C (昭和○年○月○日生)

     住所  千葉県松戸市根本100番地
          相続人兼B相続人 D (昭和○年○月○日生)

  (以下省略)

2.子に相続が開始したとき

下図では、平成30年に夫が死亡した際の相続人は妻、長女、長男でした。ところが、遺産分割協議をおこなわないでいるうち、令和5年に長男が亡くなりました。

数次相続のイメージ2

この場合、長男が持っていた相続権が、長男の相続人に引き継がれます。本例でいえば、長男の妻、および子1、子2が相続人になるわけです。この場合の遺産分割協議書の書き方は次のようになります。

なお、実際の遺産分割協議書では、夫、妻、長女、長男、長男妻、子1、子2のように書くのではありません。下記記載例の夫、妻、長女、長男、長男妻、子1、子2の箇所に、それぞれの氏名(フルネーム)を戸籍のとおり正確に記載します。

遺産分割協議書(記載例)

  最後の本籍  千葉県松戸市新松戸一丁目○番
  最後の住所  千葉県松戸市新松戸一丁目○番地
               被相続人 夫(平成30年○月○日亡)

  最後の本籍  千葉県松戸市松戸○番地
           相続人兼被相続人 長男(令和5年○月○日亡)

     住所  千葉県松戸市新松戸一丁目○番地
                相続人 妻(昭和○年○月○日生)

     住所  千葉県松戸市新松戸一丁目○番地
                相続人 長女(昭和○年○月○日生)

     住所  千葉県松戸市松戸○番地
              長男相続人 長男妻(昭和○年○月○日生)

     住所  千葉県流山市松ヶ丘一丁目○番地
              長男相続人 子1(平成○年○月○日生)

     住所  千葉県松戸市新松戸四丁目○番地
              長男相続人 子2(平成○年○月○日生)

  (以下省略)

上記の例では実際の書き方が分かりづらいかもしれないので、念のため具体例な記載例を示します(子1の氏名を「市川花子」、その父の氏名を「市川一郎」とします)。

     住所  千葉県流山市松ヶ丘一丁目○番地
              市川一郎相続人 市川 花子(平成○年○月○日生)

ここまでの記載例にあるとおり、相続人として書かれている当事者のうち、誰が誰の相続人として遺産分割協議に参加しているのかが分かるような肩書にすれば良いわけです。

ただし、複数の相続が開始している相続登記では、遺産分割協議書の作成だけでなく必要な戸籍(除籍、原戸籍)などの判断も難しい場合が多いため、相続登記の専門家である司法書士に依頼するのが通常でしょう。

3.相続人の肩書の記載は不要(先例)

なお、上記の記載例のように氏名の前に肩書を入れることにより、誰の相続人としてどのような地位で遺産分割協議に参加しているのかが明確になりますが、「数次相続が生じている場合において最終的な遺産分割協議の結果のみが記載された遺産分割協議書を添付してされた相続による所有権の移転の登記は、これをすることができる(平成29年3月30日民二237)」との先例もあります。これに従うとすれば、各相続人の肩書きなどは入れなくとも差し支えないことになります。

また、上記先例の中に「上記各相続における相続人又は相続人の地位を承継した者であるFからSまでの全員の署名押印があり、第一次相続から第三次相続までの遺産分割協議をするためにそれぞれ必要な者によって遺産分割が行われたと考えられます」との記述があります。数次相続の各相続における相続人又は相続人の地位を承継した人全員の署名押印があれば良いわけです。

実際のところ、当事務所で遺産分割協議書を作成する際には、相続人の肩書きを入れているのが通常です。しかしながら、数次相続が何度も生じていて、相続人が非常に多くなっている場合などでは、上記先例にならい「最終的な遺産分割協議の結果のみが記載された遺産分割協議書」を作成することもあります。

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