数次相続の場合の遺産分割協議書の記載について、夫A、妻Bおよび2人の間の子であるC、Dの4人家族を例にします。
被相続人である夫Aが亡くなったが、相続人である妻B、子C、子Dによる遺産分割協議がおこなわれないうちに、Bが亡くなりました(第2次相続の発生)。数次相続の場合には、被相続人と相続人との関係が明確になるようにします。
下の例では、第1次相続の被相続人Aの相続人はB、C、Dの3人ですから、まずはそれぞれに「相続人」の肩書きが付きます。
続いて、第2次相続の被相続人Bの相続人はC、Dの2人です。そこで、Bの相続人であることが明らかになるよう、「B相続人」との肩書きを付けます。
上記2つの肩書きを付けると、Bは「相続人兼被相続人」、そして、C、Dの2人は「相続人兼B相続人」となるわけです。
肩書の書き方は、絶対にこうしなくてはならないとの決まりはありませんが、誰が誰の相続人として協議に参加しているのかが明確になるようにしなくてはなりません。
それ以外には、通常の遺産分割協議書と変わるところはありません。基本的な書式例については、遺産分割協議書の書き方・サンプルをご覧ください。
遺産分割協議書
最後の本籍・住所
千葉県松戸市松戸1000番地
被相続人 A(平成23年○月○日亡)
最後の本籍 千葉県松戸市松戸1000番地
最後の住所 千葉県松戸市上本郷2000番地
相続人兼被相続人 B(平成24年○月○日亡)
本籍 千葉県松戸市松戸1000番地
住所 千葉県流山市松ヶ丘一丁目100番地
相続人兼B相続人 C(昭和○年○月○日生)
本籍 千葉県松戸市松戸1000番地
住所 千葉県松戸市根本100番地
相続人兼B相続人 D(昭和○年○月○日生)
(以下省略)
なお、上記の記載例では、被相続人だけでなく、相続人についても本籍と住所の記載を入れていますが、相続人については住所、氏名、生年月日の記載があれば足りるのが通常です。
遺産分割協議書
最後の本籍 千葉県松戸市松戸1000番地
最後の住所 千葉県流山市松ヶ丘一丁目100番地
被相続人 A (平成23年○月○日亡)
最後の本籍 千葉県松戸市松戸1000番地
相続人兼被相続人 B (平成24年○月○日亡)
住所 千葉県流山市松ヶ丘一丁目100番地
相続人兼B相続人 C (昭和○年○月○日生)
住所 千葉県松戸市根本100番地
相続人兼B相続人 D (昭和○年○月○日生)
(以下省略)
子に相続が開始したとき
下図では、平成20年に夫が死亡した際の相続人は妻、長女、長男でした。ところが、遺産分割協議をおこなわないでいるうち、平成25年に長男が亡くなりました。
この場合、長男が持っていた相続権が、長男の相続人に引き継がれます。本例でいえば、長男の妻、および子1、子2が相続人になるわけです。この場合の遺産分割協議書の書き方は次のようになります。
遺産分割協議書
最後の本籍 東京都豊島区西池袋一丁目○番地
最後の住所 東京都豊島区西池袋一丁目○番○号
被相続人 夫氏名 (平成20年○月○日亡)
本籍・住所 被相続人と同じ
相続人 妻氏名(昭和○年○月○日生)
本籍 東京都豊島区駒込一丁目○番地
住所 東京都豊島区東池袋二丁目○番○号
相続人 長女氏名(昭和○年○月○日生)
最後の本籍 千葉県松戸市松戸○番地
最後の住所 千葉県松戸市松戸○番地
相続人兼被相続人 長男氏名(平成25年○月○日亡)
本籍 千葉県松戸市松戸○番地
住所 千葉県松戸市松戸○番地
(長男氏名)相続人 長男妻氏名(昭和○年○月○日生)
本籍 千葉県松戸市松戸○番地
住所 千葉県流山市松ヶ丘一丁目○番地
(長男氏名)相続人 子1氏名(昭和○年○月○日生)
本籍 千葉県松戸市新松戸四丁目○番地
住所 千葉県松戸市新松戸四丁目○番地
(長男氏名)相続人 子2氏名(昭和○年○月○日生)
(以下省略)
上記の例では実際の書き方が分かりづらいと思われるので、次のとおり具体例を示します(子1の氏名を「東京花子」、その父の氏名を「東京一郎」とします)。
東京一郎相続人 東京花子(昭和○年○月○日)
相続人として書かれている当事者のうち、誰が誰の相続人として遺産分割協議に参加しているのかが分かるような肩書にすれば良いわけです。
ただし、複数の相続が発生している場合の相続登記は、遺産分割協議書の作成だけでなく必要な戸籍(除籍、原戸籍)等の判断も難しい場合が多いので、相続登記の専門家である司法書士に依頼するのが通常でしょう。