失踪宣告(遺産分割協議で行方不明者がいる場合)
相続人中に行方不明者がいる場合、行方不明になってから一定期間が経過しているときには、失踪宣告の制度を利用することも考えられます。
失踪宣告をすることで、生死不明の状態であるとしても法律上は死亡したものとみなされます。そのため、行方不明者についても相続が開始するので、遺産分割協議をすることが可能になります。
1.失踪宣告とは
失踪には、普通失踪と特別失踪があります。普通失踪では、不在者(行方不明者)の生死が7年間明らかでないときに、家庭裁判所が、利害関係人の請求により失踪宣告をできるとされています。
失踪宣告をするには家庭裁判所へ申立をします。すると、まずは申立人や不在者の親族などに対し、家庭裁判所調査官による調査がおこなわれるのが通常です。その後、官報や裁判所の掲示板で催告をして、期間内に不在者からの生存の届出などが無い場合に、失踪の宣告がされます。
失踪宣告がされると、普通失踪の場合には、行方不明になった日から7年間が経過したときに死亡したものとみなされます。失踪宣告により相続が開始しますから、失踪者に相続人がいれば、その相続人が遺産分割協議の当事者となります。
特別失踪は、戦地にいた人、沈没した船舶の中にいた人、その他死亡の原因となるべき危難(自身、洪水、津波、航空機事故など)に遭遇した人が対象です。それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後、その他の危難が去った後、生死が一年間明らかでないときに、家庭裁判所が、利害関係人の請求により失踪宣告をできるとされています。特別失踪の場合、失踪宣告がされると、危難が去った時に死亡したものとみなされます。
2.失踪宣告申立の手続き
2-1.申立権者(申立てできる人)
- 利害関係人
利害関係人に該当するのは、不在者の配偶者、相続人となる人、財産管理人、受遺者など失踪宣告がされることについて法律上の利害関係を有する人です。
2-2.申立てをする裁判所
- 不在者の従来の住所地、または居所地を管轄する家庭裁判所
2-3.必要書類等
最低限必要な書類は次のとおりですが、申立後に追加書類の提出を求められることもあります。
- 家事審判申立書(失踪宣告)
- 不在者の戸籍謄本
- 不在者の戸籍附票
- 失踪を証する資料(警察署長の発行する家出人届出受理証明書、返戻された不在者宛ての手紙など
- 申立人の利害関係を証する資料(親族の場合には戸籍謄本)
2-4.申立てに必要な費用
- 収入印紙 800円
- 郵便切手 3,060円分(東京家庭裁判所の場合)
- 官報広告費用 4,179円
失踪宣告以外の方法はあるのか
失踪宣告は、行方不明者を死亡したものとみなすための制度です。したがって、単に音信不通で連絡先が分からないというような場合に利用するものではありません。
現住所が分からないときでも、本籍地で調査をすることにより、現在の住民票の住所を知ることは可能です。具体的な方法や手続きについては司法書士にご相談ください。
また、行方は分からないものの生存していることが明らかな場合、また、失踪宣告の要件を満たしていない時には、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てることもできます。不在者財産管理人が選任されたら、その管理人と遺産分割協議をすることになります。
しかし、不在者が生死不明であり失踪宣告の要件を満たしているときには、失踪宣告を選択するのが通常でしょう。かりに、不在者財産管理人を選任したとしても、最終的には失踪宣告による必要があると考えられるからです。