2015年9月15日付けのダイヤモンドオンラインで「遺留分」を侵害する遺言をしたために、相続人間に争いが生じてしまった事例が紹介されています。

遺言の中身を誤ると、アンハッピーな相続になる ~遺産を渡したくない相手にも、「遺留分」はあるのです

子のうちの1人にすべての財産を相続させたいと希望される方もいらっしゃいます。長男とは同居しておりいろいろ世話をしてもらっているが、他の子は長男に任せっきりで連絡も寄越さないので、長男夫婦に全財産を残したいというようなケースが典型的な例です。

しかし、「長男に全財産を相続させる」との遺言をしたとしても、長男以外の子にも遺留分がありますから、遺言内容に納得がいかない相続人は遺留分減殺請求をすることができます。

一部の子に多くの財産を相続させようとするときでも、他に子にも最低限の遺留分相当の財産を相続させることで争いを防ぐことができます。遺留分相当の財産を与えていれば、たとえ遺言内容に不満があったとしても受け入れるしかないからです。

記事中の事例では、「自宅の土地、建物はすべて三女に譲る。長女、次女、長男は相続なし」との遺言をしています。

「他のお子さんにも配慮したほうがいいですよ」「せめて、遺留分を捻出する方法を考えませんか?」と申し上げたのですが、お父さんは「他の兄弟には、ちゃんと言い聞かせるから大丈夫」の一点張り。

上記のようなやり取りがあったものの、「すべて三女に相続させる」との遺言をしてしまったために、遺留分減殺請求をされてしまったことで不幸な結果となってしまいました。

揉めない相続のためには、しっかりした遺言書が必要。でも、それだけでは不十分だ、ということだと思うのですよ。大事なのは、相続について親子で腹を割って話し合っておくことです。

たしかに、どうして三女に多くの財産を相続させるのか、遺言者の生前からよく話をしておけば他の相続人の感情も違ったかもしれません。生前には何の話も聞いていなかったのに、遺言を見たら自分たちの相続分が一切なかったというのでは受け入れがたいのも当然です。

また、生前に話をするのが難しい場合であっても、遺言の中でなぜそのような相続をさせようとするのかを説明しておくのも一つの方法です。遺言者の真意を伝えることにより相続人全員の納得が得られれば、遺言者の意思にしたがった相続が実現できることもあるでしょう。