被相続人に養子がいて、その養子が被相続人よりも先に亡くなっている場合、その養子の子は代襲相続人となるのでしょうか。この答えは、養子縁組をした時期によって異なります。

代襲相続について定めた民法887条2項では「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、または第891条(相続人の欠格事由)の規定に該当し、もしくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる」とされていますが、続けて「被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない」との但し書きがあります。

養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する(民法809条)とされており、養子も上記の「被相続人の子」に当たるのは間違いありません。そこで、養子の子に代襲相続権があるか否かを判断するには、養子の子が「被相続人の直系卑属」に当たるのかどうかが問題となります。

下図の相続関係では、被相続人Aが養親、亡Cが養子の関係にあります。亡Cの子であるEが、ここでいう「養子の子」です。

養子の子の代襲相続権

養子縁組後に、養子の子が生まれた場合

まず、AとCが養子縁組した後に、子Eが生まれたのであれば、EはAの直系卑属です。したがって、Eは亡Cの代襲相続人となります。

養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずるとされています(民法727条)。養子縁組の日から血族間におけるのと同一の親族関係を生ずるのですから、その後、養子に子が生まれれば養親の直系卑属となるわけです。

養子縁組前に生まれた子である場合

子Eが出生した後に、AとCが養子縁組した場合、EはAの直系卑属に当たりません。そのため、EにはCについての代襲相続権がなことになります。

養子と養親に血族間におけるのと同一の親族関係が生ずるのは「養子縁組の日」ですから、養子縁組以前に生まれた養子の子と、養親との間には何らの親族関係も生じることはありません。

このことは、「養子縁組以前に生まれた養子の子は、養親と何らの血族関係を生じない(大判昭和7年5月11日)」とされていることからも明らかです。