このページでは、「相続登記の署名証明は単独形式でもよいのか」について説明します。署名証明(サイン証明)による相続登記の一般的な解説については、「相続人中に海外在住者がいて印鑑証明書が取れない場合」のページをご覧ください。
相続登記の署名証明は単独形式でもよいのか
6.まとめ
1.相続登記で署名証明が必要となる場合
相続登記をする際の遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印により押印します。そして、その実印についての印鑑証明書を添付する必要があります。
海外に居住していて日本に住民登録をしていない方については、日本の印鑑証明書に代わるものとして、署名証明が利用されます。
外務省ウェブサイトの在外公館における証明のページでは、署名証明について次のとおり説明されています。
2.署名証明の形式1と形式2の違い
さらに、署名証明の種類について、次のとおり解説があります。
形式1の説明にある「申請者が領事の面前で署名した私文書」とは、この場合、遺産分割協議書のことです。
したがって、形式1の場合には、「署名証明」(在外公館が発行する証明書)と、領事の面前で署名した「遺産分割協議書」とが綴り合わされ、割印がされることになります。
この形式であれば、署名証明と遺産分割協議書とが一体となっていますから、遺産分割協議書に署名したのが確かに本人であることを証明できます。
これに対し、形式2の場合には、署名する私文書(遺産分割協議書)を在外公館へ持参する必要はなく、「署名証明書のみが単独で交付」されます。
そのため、遺産分割協議書への署名(及び拇印)は、後から自分で行うことになります。
3.相続登記では単独型の署名証明でもよいのか
ここで問題となるのは、形式2の場合には、遺産分割協議書と署名証明とが、それぞれ別個に存在する状態になってしまうことです。
印鑑証明書の場合には、遺産分割協議書に押された印鑑が実印であるかを容易に照合することができます。これに対し、「遺産分割協議書の拇印」と「署名証明の拇印」とが同一人物によるものかを照合するのは、簡単ではありません。
そのため、相続登記に使用する署名証明については、形式1の方法によるのが確実であるため、事前に用意した遺産分割協議書を在外公館に持参して手続きをしていただくようお願いしているところです。
4.単独型の署名証明で登記が出来た例
一般的な解説としては上記のとおりですが、ご依頼の時点で、すでに単独型の署名証明が用意されていた場合には、どうすればよいのでしょうか。
まず、当事務所で遺産分割協議書を作成したうえで、形式1の方法による綴り合わせ型の署名証明を取り直していただくのが第一の選択肢です。
あるいは、管轄法務局に事前照会をしてみて、単独型では不可であるという場合には、署名証明を取り直していただくことをご了承いただいたうえで、手続きを進めることも考えられるでしょう。
この点については、実際に手続きを行った司法書士からも、法務局より形式1の署名証明を求められたとの話がありますし、事前照会をした場合には、形式1にしてほしいとの回答がなされる可能性が高いと思われます。
さらに、法務局への事前照会をせずに、単独型の署名証明を添付して登記申請をしたところ、補正になった例があるとの記述も見かけます。
前置きが長くなりましたが、当事務所では、単独型の署名証明による相続登記を申請した経験があります。このときは事前照会を行わずに登記申請をしましたが、補正を求められることなく、無事に登記が完了しています。
5.相続登記で署名証明を用意する際の注意点
現実問題として、事前に選択できるのであれば、形式1の署名証明を取得していただくのが確実ですから、司法書士が代理人となっている場合に、単独型の署名証明で相続登記申請を行った事例は、あまり多くないようにも思います。
そのため、実際には単独型の署名証明でも差し支えないとしている登記官が多い可能性があるとしても、司法書士としては、形式1(綴り合わせ型)の署名証明をご用意くださるよう強くお願いせざるを得ないところです。
相続人中に海外在住の方がいらっしゃる場合の相続登記についても、松戸の高島司法書士事務所へご相談ください。
6.まとめ
相続人の中に海外在住者がいて日本の印鑑証明書を取得できない場合には、署名証明(サイン証明)を相続登記に利用することになります。
署名証明には、遺産分割協議書と綴り合わせて割印をする形式1と、署名証明書のみが単独で交付される形式2とがあり、相続登記においては形式1の方が確実です。形式2では、遺産分割協議書と署名証明とが別個に存在することになるため、実務上は慎重に対応すべきだからです。
実際には、単独型の署名証明によって相続登記が完了した例もありますが、法務局から形式1の署名証明を求められたり、補正の対象となったりする可能性もあります。そのため、事前に選択できるのであれば、綴り合わせ型の署名証明を取得しておくのが安心です。
相続人中に海外在住の方がいる相続登記では、署名証明の取得方法や遺産分割協議書の作成方法について、あらかじめ慎重に確認しておくことが大切です。


