相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。

ただし、その例外として、被相続人の一身に専属したもの(一身専属権)については相続の対象となりません。一身専属権とは、被相続人本人でなければ目的が達成されない権利や義務です。

典型的な例としては、芸術家に作品制作を依頼していたような場合です。本人が亡くなってしまった後に、相続人が作品制作しても意味がありません。

相続人は、一身相続権だけを除いては、被相続人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぐわけです。したがって、被相続人に借金や保証債務があれば、それも無制限に引き継ぐことになります。もしも、それを望まないならば、相続放棄、または限定承認を選択する必要があります。

祭祀に関する権利の承継

上記の、相続の一般的効力に含まれないものがあります。それが、祭祀財産(系譜、祭具及び墳墓)の所有権です。祭祀財産は、相続とは関係なく祭祀を主宰すべき者が承継するものとされています(民法897条)。

祭祀財産とは、祖先を祭るために使用される家系図、位牌、仏壇、墓碑、墓地などをいいます。相続財産に含まれないのですから、法定相続人でない人が引き継ぐこともできます。また、相続放棄をした場合であっても、祭祀財産を承継することは可能です。

共同相続の効力

相続人が複数いるときは、相続財産は、その共有に属します。そして、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します(第898,899条)。

相続開始時には、相続財産が各相続人の共有とされた上で、被相続人が、遺言により指定していれば、それに従って各相続人が相続財産を承継するのが原則です。また、遺言によらないときには、相続人間の遺産分割協議の結果に基づいて、各相続人が相続財産を承継することになります。

ただし、債務については、相続債権者(被相続人に対する債権者)との関係では、各相続人がその相続分に応じて義務を承継します。つまり、被相続人が遺言により指定したり、遺産分割協議において誰が債務を引き継ぐかを決めたとしても、そのことをもって相続債権者に対抗することは出来ないのです。

(相続の一般的効力)

第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

(祭祀に関する権利の承継)

第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

(共同相続の効力)

第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。