結婚する相手が再婚であり、先妻との間に子供がいるとします。その子供との間に、相続人としての関係は生じるのでしょうか。
上の図で、被相続人は妻です。夫とは平成5年に結婚し平成20年に死別しました。2人の間に子供はいません。しかし、夫は昭和60年に離婚した先妻との間に子供が1人います。
まず確認しておきたいのは、結婚相手に子供がいる場合、婚姻することによってその子供との間で親子関係が生じることはありません。
親が再婚したときに、新しいお母さん(お父さん)などと表現するのはよくあることですが、法律上の親子関係はありません。
もしも、法律上の親子関係を生じさせようとするなら、再婚相手の子供と養子縁組をします。そうでなければ、単に配偶者の子供だというだけであり、それ以上の関係はないのです。
したがって、養子縁組をしていなければ、前妻との子供(以下、「長男」と書きます)は、被相続人である妻の相続人とはなりません。
妻に相続が開始するとどうなるか
ここで大きな問題があります。仮に、平成20年に夫が亡くなった際、妻と長男との遺産分割協議により、妻が全ての遺産を相続していたとします。この時点で、夫の財産はすべて妻に移っているわけです。
今回、妻が亡くなったことで相続が開始しましたが、長男は相続人ではありません。すると、妻の相続人に全財産が行ってしまうことになります。
父の後妻であっても、親子だと考えていたから、妻が父の遺産全てを相続することに合意しました。それが、いざ妻について相続が開始してみたら、自分には遺産を相続する権利が一切無いことが分かったのです。
この場合、妻に直系尊属(父母)、兄弟姉妹(または、その代襲者である甥っ子、姪っ子)がいれば相続人となります。○○家の財産だと考えていたのが、後妻の親族にすべての権利が移ってしまうわけです。
夫の先妻との子に、自分の財産を相続させる方法
まずは、養子縁組をすることで法律上の親子関係を生じさせておくのが第一の選択肢です。相続においては、実子と養子の区別はありませんから、本例でいえば長男が唯一の相続人として、妻の全財産を相続します。
また、今から養子縁組をする気は無いという場合でも、遺言書を作成しておくことで、長男に対して遺産を引き継がせることができます。遺贈(遺言による贈与)によれば、相続人でない人に遺産を与えることも可能だからです。
養子縁組をしておらず、遺言書も書いていなかったとすれば、長男には遺産を受け取る権利が一切ありませんから、必ず生前に対策をおこなっておくべきだといえます。遺言書の作成については、司法書士などの専門家と相談した上で進めていくのがよいでしょう。