死因贈与とは、贈与者と受贈者が、贈与者の生前におこなう贈与契約をいいます。死因贈与の効力が生じるのは贈与者の死亡の時ですが、不動産の死因贈与契約では、贈与者の生前に「死因贈与契約による仮登記」をすることができます。

1.死因贈与と遺贈

死因贈与が、贈与者と受贈者との契約であるのに対して、遺贈は「遺言による贈与」であり、遺言者の遺言による一方的な意思表示によるものです。死因贈与は、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する(民法554条)とされており、死因贈与も遺贈と同様に遺言者の死亡の時からその効力を生じます(民法985条1項)。

遺贈と死因贈与の大きな違いとして、不動産の死因贈与契約の場合には、贈与者の生前に死因贈与契約による仮登記をすることができます。遺贈では、たとえ公正証書遺言によったとしても、遺言者の生前に所有権移転仮登記をすることはできません。

民法第554条(死因贈与)

 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

民法第985条(遺言の効力の発生時期)

 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

2.公正証書による仮登記の単独申請

死因贈与による所有権移転の仮登記は、受贈者と死因贈与者との共同申請で行うのが原則です。けれども、死因贈与者(仮登記義務者)の承諾があるときは、受贈者(仮登記権利者)から単独で申請することもできます。

また、死因贈与契約書が公正証書により作成されており、仮登記義務者が所有権移転の仮登記を申請することを認諾している旨の記載があるときは、仮登記登記権利者が単独で仮登記の申請をすることができます。この場合には、登記申請書の添付書類として承諾書(公正証書)」と記載しますが、仮登記義務者の印鑑証明書の添付は不要です。

3.死因贈与契約による所有権移転登記

死因贈与契約を締結した後に、死因贈与者が死亡したときには、その死因贈与が効力を生じるので、不動産の所有権移転登記をおこなうことができます。

死因贈与契約において、贈与契約の執行者が指定されていないときは、死因贈与者の相続人全員が登記義務者の地位を承継します。そのため、所有権移転登記は、受贈者と贈与者の相続人全員とが共同して申請をする必要があります。

けれども、死因贈与契約書で、その契約を執行すべき者を指定しているときには、受贈者と執行者との共同申請により所有権移転登記をすることができます。つまり、相続人の協力を得ること無しに、死因贈与による所有権移転登記がおこなえるわけです。

ただし、死因贈与契約書が公正証書で無い場合(私署証書で執行者が指定されている場合)には、その死因贈与契約書に贈与者が押印した印鑑についての印鑑証明書、または贈与者の相続人全員の印鑑証明書付き承諾書を添付しなければなりません(この印鑑証明書については、3か月以内という制限はありません。

公正証書による死因贈与契約書で、その契約を執行すべき者を指定している場合には、上記の印鑑証明書等は不要です。たとえば、受贈者と執行者が同一人であるときには、受贈者が誰の協力を必要とすることもなく所有権移転登記が可能となります。

4.死因贈与による登記を確実におこなうための注意事項

せっかく死因贈与契約をしても、最終的に、受贈者への所有権移転登記をおこなうことができなければ意味がありません。そこで、死因贈与契約を締結する際には、下記の3つを全て満たすようにするのがよいでしょう。

1.死因贈与契約書を公正証書により作成すること。

2.仮登記義務者が、始期付所有権移転仮登記を申請することを承諾している旨の記載を入れること。

→仮登記権利者が単独で仮登記の申請をすることができます。

3.死因贈与契約を執行すべき者を指定してしておくこと。

→所有権移転登記をする際に、相続人の協力が不要になります。

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