不動産登記についての先例や質疑応答のうち、贈与(生前贈与、死因贈与)による所有権移転登記に関連するものを選んで掲載しています。内容の正確性については一切の保証をしません。また、ご質問も承っておりません。

死因贈与

死因贈与については、遺贈に関する規定が準用され、贈与者は、受贈者に対する意思表示によって何時でも死因贈与の取消をすることができるし、死因贈与とその贈与後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合は、抵触する範囲において死因贈与を取消したものとみなされるので、本件のように、死因贈与後に目的不動産上に抵当権が設定された場合は、本件死因贈与は、これと抵触する範囲において取り消されたものとみなされ、結局、抵当権付きの不動産の死因贈与として有効ということになる。(広島地判昭和49.2.20)

死因贈与において、受贈者が贈与者より先に死亡した場合には民法994条1項が準用され、死因贈与の効力は受贈者が死亡した時点で失われる(東京高判平成15.5.28)。

死因贈与について、贈与者よりも先に受贈者が死亡した場合に、贈与に関する民法994条1項が準用され、受贈者が死亡した時点で死因贈与の効力が失われる(東京地判平成22.3.19)。

死因贈与において、贈与者よりも先に受贈者が死亡した場合に、贈与に関する民法994条1項が準用されず、死因贈与の効力が失われないとされた事例(京都地判平成20.2.7)。

公正証書により死因贈与契約が締結され、その執行者が指定された場合、遺言執行者に関する民法の規定が準用されるとした上で、死因贈与執行者は、受贈者への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求める訴えについて、原告適格が認められる(東京地判平成19.3.27)

生前贈与

不動産の贈与を受けた者が死亡した場合、その相続人は贈与者に対し、直接相続人名義に所有権移転登記手続をすることを求めることはできず、受贈者に対し右登記手続をすることを求めるべきである(東京高判昭和57.2.25)。

被相続人が不動産を他人に譲渡(贈与)し、いまだその登記をしない間に相続が関始し、相続人が相続登記をした場合には、譲受人(受贈者)は、相続人に対し譲渡の登記手続を請求することができる(大審判大正15.4.30)。

未登記土地の贈与を受けた者は、贈与者の相続人が所有権保存登記をした場合、これに対して贈与による所有権移転登記を請求することができる(大審判大正7.6.18)。

贈与の登記手続き

未成年者において不動産の贈与を受け、その所有権取得の登記を申請するには、後見人の同意を必要としない。ただし、負担附贈与の場合は、この限りでない(明治32.6.27民刑1162局長回答)。

受贈者に対する土地所有権移転登記が、贈与者の死亡後の申請によって行われた場合であっても、右登記が死亡者及びその相続人の意思に反しないものと認められ、かつ実体上の権利関係に符合するものであるときは、相続人は、受贈者に対し、その抹消を請求することは許されない(最判昭和30.9.9)。

受遺者は、その遺贈の登記をしなければ、その所有権をもって、相続人から当該不動産を目的として抵当権の設定を受け、その登記をした抵当権者に対抗することができない(東京高判昭和34.10.27)。

相続人の全員に対して各別に「後記物件を遺贈する」旨の記載がある公正証書による遺言に基づく所有権移転の登記原因は、「遺贈」とするのが相当である(昭和58.10.17民三第5987第三課長回答)。

遺言の解釈に当たっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言書において表明されている遺言者の真意を探求すべきものではあるが、遺言という意思表示の解釈問題である以上、まず重視すべきは遺言書の文言であり、本件遺言は、遺言書の記載上全部包括遺贈であることが明らかであって、被相続人(申請人)が
「相続させる」という文言で遺言公正証書を作成するという公証実務を知っていたかどうかを調査することは、登記官の形式的審査権の及ぶ範囲外であり、登記官としては、申請書類と登記簿を審査の資料として、遺一宮白書の全記載に照らし右公証実務をも考慮の上、合理的に遺言の趣旨を解釈すべきである(仙台高判平成10.1.22)。

遺言者が、その者の法定相続人中の一人であるAに対し、「甲不動産をAに相続させる」旨の遺言をして死亡したが、既にAが遺言者より先に死亡している場合には、Aの直系卑属Bがいる場合でも、遺言書中にAが先に死亡した場合にはAに代わってBに相続させる旨の文言がない限り、民法994条1項を類推適用して、甲不動産は、遺言者の法定相続人全員に相続されると解するのが相当であり、その相続の登記をなすべきである(昭和62.6.30民
三第3411第三課長回答)。

「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、遺言者が代襲者等に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特設の事情のない限り、その効力を生じない(最判平成23.2.22)。

注)相続させようとする人が遺言者よりも先に亡くなった場合に、他の人に相続させようとするときに、「遺言書中にAが先に死亡した場合にはAに代わってBに相続させる」旨の文言を入れることが行われます。これを、予備的遺言といっています。

相続人に対する遺産分割方法の指定による相続がされる場合においても、この指定により同相続人の相続の内容が定められたにすぎず、その相続は法定相続分による相続と性質が異なるものではなく、代襲相続人に相続させるとする規定が適用ないし準用されると解するのが相当である(東京高判平成18.6.29)。