・ 被相続人が特定の相続財産を特定の共同相続人に取得させる旨の遺言をした場合には、特別の事情のない限り、これを右特定の財産の遺贈とみるべきではなく、遺産分割において右特定の財産を当該相続人に取得させるべきことを指示する遺産分割方法の指定(民法908条)とみるべきものであり、もし右特定の財産の価額が当該相続人の法定相続分を超えるときは、相続分の指定(同法902条)を併せ含む遺産分割方法の指定をしたものと解するのが相当である(東京高裁判決昭和60年8月27日)。

・ 相続に際し、誤って他人名義(被相続人と同一氏名)の建物所有権保存登記がされても、相続による本来の所有権取得者は、登記なくして第三者に対抗できる(東京地裁判決昭和29年12月17日)

・ 相続開始から遺産分割までの聞に共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、この賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない(最高裁判決平成17年9月8日)

・ 家庭裁判所に相続放棄の申述が受理された後でも、これによる放棄の効力を訴訟手続において争うことができる(東京高裁判決昭和30年6月18日)。

・ 共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる(最高裁判決平成2年9月27日)

・ 特定の財産を共同相続人の一人に「相続させる」旨の遺言は、遺言者の意思が明確に遺贈であると解されない限り、遺産分割方法の指定と解するのが相当である。

・ 特定の財産を共同相続人の一人に「相続させる」旨の遺言により遺産分割方法の指定がされた場合、右共同相続人が当該財産を取得する意思を表明したときは、右共同相続人は、遺産分割の協議又は審判を経るまでもなく、その所有権を取得する(大阪高裁判決平成2年2月28日)。

・ 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきである。

・ 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される。(最高裁判決平成3年4月19日)

・ 「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は、法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはない。そして、法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については、登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる(最高裁昭和38年2月22日判決、最高裁平成5年7月19日判決参照)。したがって、「相続させる」趣旨の遺言によって取得した不動産の権利の取得についても、登記なくして第三者に対抗することができる(最高裁判決平成14年6月10日)。

・ 共同相続人である未成年の子とその親権者との間の遺産分割協議によって、遺産の全部が未成年の子に帰属した場合は、当該行為は利益相反行為にあたらないので、その相続登記の申請には特別代理人の選任を証すべき書面の添付を必要としない。

・ 登記官は、登記申請書および添付書面の記載から判断しうるかぎり、申請内容の実体に関する事項の審査もなしうるものであるから、遺産分割協議書の内容等からみて、特別代理人の選任を要しないと判断することは、形式審査主義に抵触するものではない(札幌高裁判決昭和46年4月27日)。