不動産登記についての先例や質疑応答のうち、相続登記に関連するものを選んで掲載しています。個々の内容の正確性については一切の保証をしませんし、またご質問等も受け付けておりません。

相続登記に関連する先例()(2)(

遺言による相続登記

・ 検認を経ていない自筆証書の遺言書を相続を証する書面として申請書に添付した相続による所有権移転の登記の申請は、不動産登記法49条8号(現在の不動産登記法25条9号)の規定により却下するのが相当である(平成7.12.4民3第4343第三課長回答)

・ 遺言者Xは、その遺産について、次のとおり相続させるとして、(1)長男甲にA不動産、二男乙にB不動産、その他の財産は甲・乙均分とする、(2)長男甲にA不動産、二男乙にB不動産、(3)A不動産は長男甲とする遺言がなされた場合は、いずれも「相続」を原因とする所有権移転の登記をすることができる。また、遺言者Xはその遺産の全部を長男甲に相続させる、とした場合も、同様とされる(昭和47年4月17日民甲1442局長通達)

・ 相続させる旨の遺言による所有権移転の登記をする場合において、遺言書に遺言者及び相続人の住所の記載がないときでも、登記名義人と遺言者との同一性が認められる限り、その相続による所有権移転の登記の申請をすることができる(登研548.165)。

代襲相続による相続登記

・ 被相続人甲が死亡し、乙・丙及び戊(丁の代襲相続人)が相続した甲名義の不動産につき、相続登記未了のうちに乙の死亡によりA・B・Cが、丙の死亡によりX(Dの代襲相続人)が相続し、さらにその後、戊・A及びXが各自の相続分をそれぞれBに2分の1、Cに2分の1ずつ譲渡した場合において、B及びC名義への所有権移転登記をするには、(1)相続を原因とする乙・丙及び戊名義への所有権移転の登記、(2)乙持分について相続を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記(Aの印鑑証明書付相続分譲渡証書添付)、(3)丙持分について相続を原因とするX名義への持分全部移転の登記、(4)戊及ぴX持分について相続分の売買又は相続分の贈与等を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記を順次申請するのが相当である(平成4年3月18日民三第1404第三課長回答)。

・ 甲、乙、丙3子全員が相続開始前に死亡し、乙の2子丁戊、丙の1子巳が相続する場合は、代襲相続人として、丁戊は乙の相続分(2分の1)の各2分の1を、巳は丙の相続分(2分の1)を相続する(昭和28年7月31日民甲1182局長通達)

特別受益(相続分のないことの証明書)

・ 共同相続人中の一人が、相続開始前、生前贈与を受け、その価格が相続分を超える場合には、その者に相続分がない事実を証する書面を添付して、他の共同相続人において相続登記を申請することができる(昭和8年11月21日民甲1314局長回答)。

・ 共同相続人中のある者が婚姻、養子縁組等のためまたは生計の資本として相続分の価格を超える財産の贈与を受けている場合は、相続分がない旨の同人の証明書を添付して、他の相続人から遺産の相続登記の申請をする乙とができる(昭和28年8月1日民甲1348局長回答)。

・ 共同相続人となるべき乙が、被相続人甲から相続分を超えて生前贈与を受け、乙が甲より先に死亡した場合は、乙の代襲相続人丙が作成した「乙は甲から特別受益を受けている」旨の証明書を添付して、丙を除く他の相続人から相続登記の申講をすることができる(昭和49年1月8日民三第242局長回答)。

・ 未成年者(満17歳)が白から作成した「相続分のないことの証明書」は、その者の印鑑証明書の添付があるかぎり、適正なものとして取り扱われる(昭和40年9月21日民甲2821局長回答)。

相続放棄

・ 相続の放棄は、相続人が自己のために開始した相続につき、その効力を受けることを拒絶して、これを消滅させる意思表示である以上、次順位の兄弟としての身分を有する養子が相続の放棄をしたときは、当然第一順位たる直系卑属としての相続権と次順位たる兄弟としての相続権を放棄したものと解される(昭和32年1月10日民甲61局長回答)。

・ 被相続人に配偶者及び直系卑属がなく、直近の直系尊属である父も相続放棄をしたとき(母は相続開始前に既に死亡)は、祖父両名が相続人となり、その相続分は各2分の1である(昭和32年4月16日民甲774局長回答)。

・ 相続を放棄した者は、被相続人の生前売渡に係る不動産についての所有権移転登記義務を承継するものでない(昭和34年9月15日民甲2067局長回答)。

遺産分割協議

・ 不在者の財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、遺産分割の協議に参加することができる(昭和39年8月7日民三発597課長回答)。

・ 共同相続人中の2名に相続させ、分割の方法はその2名の協議で決める旨の遺言がある場合は、その遺言書及び当該2名の相続人による遺産分割協議書を添付して相続登記の申請をすることができる(登研565.141)。

・ 未成年者とその親権者とが遺産分割協議をするには、分割の結果が法定相続分相当となる場合であっても、未成年者のために特別代理人の選任を要する(登研476.140)。

その他

・ 二重に養子縁組をしている養子であっても、第一縁組が解消されていない限り、第一縁組の養親が死亡したときは、自己を相続人とする登記の申請をすることができる(登研592.185)。