不動産登記についての先例や質疑応答のうち、相続登記に関連するものを選んで掲載しています。個々の内容の正確性については一切の保証をしませんし、またご質問等も受け付けておりません。

相続登記に関連する先例(1)()(

相続登記の手続き

・ 共同相続人の一人の持分のみについては、その相続登記をすることはできない(昭和30年10月15日民甲2216局長回答)。

・ 遺言者が、その者の法定相続人中の一人であるAに対し、「甲不動産をAに相続させる」旨の遺言をして死亡したが、既にAが遺言者より先に死亡している場合には、Aの直系卑属Bがいる場合でも、遺言書中にAが先に死亡した場合にはAに代わってBに相続させる旨の文言がない限り、民法994条1項を類推適用して、甲不動産は、遺言者の法定相続人全員に相続されると解するのが相当であり、その相続の登記をなすべきである(昭和62年6月30日民三第3411第三課長回答)。

・ 共同相続人A、B、C、Dのうち、A、B、Cがその相続分をDに譲渡した場合は、被相続人名義の不動産につき、A、B、Cの印鑑証明書付相続分譲渡証書を添付して、Dから、自己のみを相続人とする相続登記を申請することができる。

・ 共同相続人A、B、C、Dのうち、A、Bがその相続分をDに譲渡し、D、C間で不動産はDが取得する旨の遺産分割協議が成立した場合には、被相続人名義の不動産につき、A、Bの印鑑証明書付相続分譲渡証書及びD、C間の遺産分割協議書を添付して、D一人から、自己のみを相続人とする相続登記をすることができる(昭和59年10月15日民三第5195第三課長回答)。

・ 被相続人Aの共同相続人B、C、D、E、F(法定相続分各5分の1)のうち、C、D、Eがその相続分をBに譲渡した場合には、被相続人名義の不動産につき、B持分5分の4、F持分5分の1とする相続の登記の申請をすることができる(昭和59年10月15日民三第5196第三課長回答)。

・ 被相続人Aの相続人B、C、D、E、F(法定相続分各5分の1)のうち、B、C、D及びE間で遺産分割協議を行い、Fを除く5分の4はBが相続する旨の遺産分割協議書をB、C、D及びEで作成し、F5分の1、B5分の4とする相続登記の申請をすることはできない(登研507.198)。

・ 遺産分割により共同相続人中の一部の者の共有と定められた物件についての相続による所有権移転の登記の申請は、当該共有者中の一人からすることができるが、この場合は、当該共有者の一人を除く、他の共同相続人全員の印鑑証明書の添付を要する(登研553.134)。

・ 甲の死亡により、乙・丙が共同相続人となったが、相続登記未了の間に乙が死亡し、丁が乙の相続人となり、さらに丙が死亡し、戊が丙の相続人となった場合において、甲の相続につき、丁、戊間において、甲名義のA不動産は乙が、B不動産は丙が相続する旨の遺産分割の協議が整ったときは、甲名義から直ちに丁又は戊名義とする所有権移転の登記の申請をすることができる。この場合の登記原因及びその日付は、A不動産については「年月日乙相続(甲死亡の日)、年月日相続(乙死亡の日)」、B不動産については「年月日丙相続(甲死亡の日)、「年月日相続(丙死亡の日)」とし、各別の申請による(登研544.106)

・ 胎児を相続人とする相続登記をすることができるが、この場合の名義表示は、「亡何某妻何某胎児」とする(もし、胎児が死体で生まれたときは、他の相続人より登記の抹消を申請することができる)(明治31年10月19日民刑1406局長回答)。

・ 特定の不動産を「相続人Aに相続させる」旨の遺言に基づくAのための相続を原因とする所有権移転の登記の申請については、遺言執行者に代理権はない(登研523.140)。

・ 被相続人の戸籍の身分事項欄に「年月日時及び場所不詳死亡・昭和何年何月何日付許可を得て同月何日除籍」とある場合には、登記原因及びその日付を「年月日不詳相続」として相続の登記を申請することができる(登研330.77)。

・ 被相続人の死亡日時が判明しないため、戸籍上「昭和45年10月1日から10月8日の間に死亡」と記載されている場合の当該被相続人の相続登記の登記原因としては「昭和45年10月1日から10月8日の間相続」としてよい(登研337.70)。

・ 遺言者Xは、その遺産について、次のとおり相続させるとして、(1)長男甲にA不動産、二男乙にB不動産、その他の財産は甲・乙均分とする、(2)長男甲にA不動産、二男乙にB不動産、(3)A不動産は長男甲とする遺言がなされた場合は、いずれも「相続」を原因とする所有権移転の登記をすることができる。また、遺言者Xはその遺産の全部を長男甲に相続させる、とした場合も、同様とされる(昭和47.4.17民甲1442局長通達)。

・ 共同相続人の一人に相続財産の一部を、他の一人に残りの相続財産の一切を相続させる旨の記載のある遺言書に基づく所有権移転登記にあっては、右遺言が相続分を指定したものと解される以上、その登記原因は、「相続」とするのが相当である(登研357.84)。