(質問)
父が亡くなりました。現在は空き家になっている父名義の家を、父の弟に名義変更したいと考えています。下図のとおり、父の相続人に当たるのは、母(父の妻)と長男(父の子)の2人です。

この場合、父から、父の弟に家の名義を直接変更する方法できますか?それとも、相続人である、母または長男の名義にいったん変更しなければなりませんか?

父たち兄弟が育った家なので、私たちが相続するよりも、父の弟の名義にするべきだと考えています。けれども、まずは相続人名義にしなければならないのでは、費用や手間の面でもったいない気もします。

相続関係説明図

(回答)
お父様のご実家を、長男であるお父様へ相続によって名義変更しているということでしょうか。

もしも、お父様が生前に遺言書を作成していたなどの事情があるならば別ですが、そうでなければ、相続人以外の人に直接名義変更することはできません。

仮にご質問のケースで、ご相談者およびお母様のお二人ともが、お父様の相続を放棄したとすれば、兄弟姉妹が相続人となります。ただし、ここでいう相続放棄とは家庭裁判所でおこなう手続きを指すのであり、相続放棄をした人は一切の財産を相続できなくなってしまいます。

つまり、お父様の遺産がすべて、お父様の弟さんのものになってしまうわけです。ご質問の意図は、お父様たちのご実家の名義だけを、弟さんに譲りたいということでしょうから、相続放棄をするとの選択肢はありません。

結局、相続財産である家を、相続人ではない人の名義に直接変更する手段はないとの結論に至るわけです。

よって、お父様の弟さん名義に変更するとすれば、次の手順によるしかないことになります。

1.相続により、相続人であるお母様、またはご長男に名義変更
2.贈与により、弟さんの名義に変更

家の名義を変更するには税金(登録免許税)がかかります。相続による名義変更では、家の固定資産税評価額の0.4%が登録免許税額です。これが、贈与による場合には、固定資産税評価額の2%となります。

もしも、家の固定資産税評価額が1000万円だったとしたら、相続だけなら4万円で済むのが、さらに20万円の登録免許税がかかってしまうことになります。この他に、司法書士に登記手続きを依頼すれば、司法書士費用も相続と贈与の2件分が必要です。

加えて、不動産を贈与するときには贈与税についても考慮する必要があります。古い家だけであれば問題無いかもしれませんが、土地もあわせて贈与するとなると贈与税が高額になることもあります。

このような点を考慮した上で、どのように名義変更をすべきか検討するのが良いでしょう。

なお、お父様の生前に対策が取れるのだとしたら、「遺言者所有の家を弟に遺贈する」という内容の遺言書を作成しておくべきです。こうしておけば、家の名義を相続人でない人に直接変更することが可能です。