被相続人の最後の住所と、登記簿上の住所が違う場合の登記手続

不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)には、所有者の住所および氏名が書かれています。この住所は、引っ越しをして住民票の住所が変わった場合でも、自動的に書き換えられるわけでは無く、自ら登記申請をしなければ変更されません。

そのため、不動産を購入した後に引っ越したことなどにより、登記簿上の住所が古いままになっているケースもよくありますが、相続による所有権移転登記をする際には、登記簿上の住所と被相続人の最後の住所が異なる場合であっても、そのまま登記をすることができます。

売買や贈与などにより所有権移転登記をするときは、登記簿上の住所と現住所が異なる場合には、先に住所変更の登記をしなければなりません(所有権登記名義人住所変更の登記)。ところが、相続の場合は、同じ所有権移転登記であっても、事前に住所変更登記をしないで良いのです。

1.被相続人の住所が変わっている場合の必要書類

被相続人の最後の住所と登記簿上の住所が異なる場合には、相続による所有権移転登記(相続登記)をする際に、住所移転の経緯がすべて分かる書類を添付するのが原則です。つまり、登記簿に記載されている住所から最後の住所に至るまで、全てのつながりが分かるだけの住民票(除票)や、戸籍(除籍)の附票などを提出が求められるわけです。

これは、登記簿に記載されている所有者と、被相続人が同一人物であることを、書類上で証明するために求められるものです。被相続人と相続人の親族関係や、相続の開始(被相続人の死亡)などの証明は戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)によります。ところが、戸籍謄本などに書かれているのは本籍地であり、住所は記載されていません。

一方、登記簿謄本に書かれているのは住所です。多くの場合、本籍地と住所は異なりますから、戸籍謄本に書かれている人と、登記簿謄本に書かれている人が同一人物であるか判断できません。そこで、本籍地が記載されている住民票(または、戸籍の附票)によって、本籍地と住所を結びつける必要があるわけです。

さらに、被相続人の住民票除票の住所と、登記簿上の住所が異なる場合には、上記の通り、そのつながりが分かるだけの書類も求められるわけです。

2.住所変更登記をしないでいた場合の問題点

上に述べたとおり、相続による所有権移転登記をする際には、登記簿上の住所と被相続人の最後の住所が異なる場合であっても、事前の住所変更登記(所有権登記名義人住所変更)は不要なのですが、住所移転の経緯をすべて証明できるだけの住民票(または、戸籍の附票など)を用意しなければならないのが原則です。

ところが、転居をしたことにより住民票が除票となった場合、その時から5年間が過ぎると、除住民票は保存期間経過により廃棄されます。戸籍の附票についても、戸籍が転籍などにより消除(または、改製)されてから5年が経つと同様に廃棄処分となってしまいます。

住所を証明するための書類は、(除)住民票、戸籍(除籍、改製原戸籍)の附票のいずれかに限られます。そのため、登記簿上の住所と、被相続人の最後の住所のつながりを証明できる書類を取ることは不可能となります。

その場合でも、不在籍証明書・不在住証明書、不動産を取得したときの登記済権利証、さらには相続人全員による証明書などを提出することで、相続登記が可能となるのが実務の取り扱いです。つまり、住所変更の経緯を証する書面が取得不能だからといって、相続登記ができなくなるわけではありません。

けれども、通常の相続登記をするのに比べて、手間や費用が大幅に増える恐れもありますから、引っ越しをした際には所有不動産の住所変更登記もおこなっておくのがよいでしょう。

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