未成年者のための特別代理人選任(遺産分割協議の場合)
遺産分割をする際、相続人中に未成年者がいる場合には、親権者(または、未成年後見人)が未成年者の法定代理人として協議に参加します。

しかし、未成年者とその親権者である親が共に相続人である場合、遺産分割協議において、親権者がその子である未成年者の代理人となることはできません。遺産分割の内容を決定することについて、親権者と未成年者との間で利益が相反するからです。

そこで、親権者に代わる法定代理人として、家庭裁判所で未成年者のために特別代理人を選任してもらい、その特別代理人が未成年者を代理して遺産分割協議をおこなうのです。

1.どのようなときに特別代理人選任が必要か

特別代理人の選任(相続関係説明図)右の図では、被相続人である夫の遺産分割協議をおこなうためには、未成年者である長男のために特別代理人の選任が必要です。

さらに、長女も未成年者であった場合には、長女のためにも特別代理人選任が必要です。このとき、長女と長男にそれぞれ別々の特別代理人が必要となります。親子間と同様に、長女と長男の間でも利益が相反するからです。

なお、遺産分割協議における特別代理人選任の要否について、登記実務上は、次のような取扱がされています。

  1. 未成年者とその親権者とが相続人である場合において、遺産分割協議をするには、分割の結果が法定相続分となる場合であっても、未成年者のために特別代理人の選任を要する(登記研究476号)。
  2. 親権者である母と未成年の子が共に相続人である場合において、遺産分割協議の結果、母は相続財産の分配を受けないものとするときでも、特別代理人の選任を要する(登記研究459号)。

2.家庭裁判所への特別代理人選任の申立て

特別代理人選任の申立ては、子(未成年者)の住所地の家庭裁判所へおこないます。必要書類は次のようなものです。申立時にかかる費用は、未成年者1人あたり収入印紙800円と、連絡用の切手が数百円分です(千葉家庭裁判所では870円分)。

  • 特別代理人選任申立書
  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 親権者(または未成年後見人)の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票
  • 利益相反に関する資料(遺産分割協議書の案)

遺産分割協議書(案)には、不動産(土地、建物)、預貯金、有価証券(株券、投資信託など)やその他の遺産を誰がどのような割合で引き継ぐかを記載します。そして、その遺産の価値が分かる資料の提出も求められると思われます。銀行預金であれば残高証明書または通帳の写し(コピー)、不動産ならば登記簿謄本(登記事項証明書)と固定資産評価証明書などです。

特別代理人が選任されると特別代理人選任審判書が交付されますが、この審判書は遺産分割協議書(案)とホチキス留めし契印されています。不動産の名義変更などの遺産相続手続きをする際には、特別代理人選任審判書の提出が求められるので、裁判所に提出した遺産分割協議(案)のとおりにおこなわなければならないのです。

3.特別代理人選任のよくあるご質問

3-1.手続きの流れ、必要な期間

家庭裁判所へ特別代理人選任申立書などの必要書類を提出して申立をします。申立は司法書士がおこないますから、ご依頼者が裁判所へ行く必要はありません。

申立からしばらくすると、家庭裁判所から特別代理人候補者へ文書による照会がおこなわれるのが通常だと思われます。照会書に対する回答を返送した後に、申立人に対して特別代理人選任審判書が送られてきます。

ここまで順調に進めば2,3週間で手続きが終了しますが、申立をする裁判所によってはもっと時間がかかることもあります。

3-2.特別代理人候補者について

特別代理人になる人の資格にはとくに制限はありません。遺産分割について利害関係の無い人であれば、子の親族であっても問題ありません。たとえば、申立人の父母(未成年者の祖父、祖母)が特別代理人になることもできます。

また、特別代理人は家庭裁判所が選任するものではありますが、現実には申立書に記載した「特別代理人候補者」がそのまま選ばれるケースがほとんどだと思われます。

3.遺産分割協議の内容について

家庭裁判所へ特別代理人選任申立をする際には遺産分割協議書(案)を提出します。裁判所で遺産分割協議書の内容を確認した上で、特別代理人が選任されますから、申立時と異なる内容での遺産相続手続きをすることはできません。

そして、遺産分割協議内容が未成年者に不利なものであれば特別代理人選任は認められないのが原則です。たとえば、法定相続人が被相続人の妻と子の2人であったとすれば、最低でも子が遺産の半分を相続するものとしなければならないわけです。

しかし、相続人が親と子で、親がその未成年である子の親権者であって、子の一切の生活の面倒を見ているような事情があるようなときには、上記の原則と異なる遺産分割内容であっても、裁判所に認められる場合もあります。つまり、親権者である親がすべての財産を相続し、未成年者は全く相続しないとの遺産分割協議ができることもあるのです。

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